オリックス紅林弘太郎(2020年11月6日撮影)
オリックス紅林弘太郎(2020年11月6日撮影)

<みやざきフェニックス・リーグ:DeNA8-6オリックス>◇12日◇SOKKENスタジアム

日本ハムを皮切りに、42年間プロ野球界で生きてきた日刊スポーツ評論家・田村藤夫氏(61)が、12日のオリックス-DeNA戦では2人の高卒1年目のショートに注目した。オリックス紅林弘太郎内野手(18=駿河総合)の状況判断の甘さを指摘しつつ、緊張感の中でこそ得るものがあるとして、高卒ルーキーにとってこの時期の大切さを説いた。

バッティングは4打数3安打で結果も出ている。特に5回1死二塁では、カウント1-2と追い込まれてから、外角ストレートを右前にはじき返している。長打力という感じではなく中距離ヒッターというイメージだが、4年目の京山将弥投手(22=近江)が追い込んでから投じた、アウトコースきっちりに制球した勝負球を右へ運んだ。高卒ルーキーとは思えない勝負強さを感じた。

むしろ、紅林が貴重な体験をしていると感じたのは守備、走塁での状況判断という面だった。

まず守備で目についたのは、4回1死二、三塁の前進守備という場面だった。打球は三遊間に飛び、紅林は捕球してホームへ送球したが、ノーバウンド送球を狙ったもののハーフバウンドとなり、さらに一塁側へそれ、結果として2点が入った。

打球が三遊間に飛び、紅林は追いつくが、この時すでに体勢は崩れていた。片膝をついており、ここでは無理してノーバウンドでの送球を選択せず、ワンバウンドで正確にホームに送球すべきだった。本塁はタッチプレーが必要で、まず本塁でアウトにすることが優先された。肩が強く自信があるのだろうが、プロではこのタイミングでのノーバウンド送球は、リスクが高いんだと学習することが次につながる。

ここで教訓としてしっかり自分のものにできれば、同じ状況で似たような打球が飛んだ時、とっさの判断の中でも体が覚えている。むしろ、失敗したことで公式戦に向けた貴重なヒントを得たと考えていいくらいだ。

同様に、走塁面でも危なっかしい動きがあった。

4回の第2打席は先頭打者で、中前打を放ち出塁。後続の左打者のセカンドライナーで飛び出し、あわや併殺というきわどいタイミングだった。セーフにはなったが、ここでも打球判断が甘い。1死一塁と、帰塁できずに2死走者無しではまるで違う。セーフになったからホッとするのではなく、走者としてここでは何が優先されるのかを常に頭の中で整理しておかないといけない。打球の飛んだ方向を確認してから判断していては、すべてが後手に回る。一瞬で正確にジャッジできるよう経験を積むしかない

こうした場面は、練習では経験できない。試合という緊張感の中でないと味わえない、とっさの判断になる。さらに言えば、成功ばかりしていては、どこからが失敗になるかの区別もつかない。走者を三塁に置いての三遊間の打球処理にしても、どの体勢ならばノーバウンド送球ができて、どこからがワンバウンド送球か。そうしたわずかな差は、失敗の中から学んでいくしかない。

むしろ、紅林はいろんなものを学習できる実戦の中にいる。このフェニックス・リーグの中で多くの状況を経験し、強化すべきポイントを明確にして先に進んでほしい。

13日はDeNA-中日戦(アイビー)。昨年まで中日2軍バッテリーコーチを務めていたので、中日の若手の成長が見られるか楽しみだ。(日刊スポーツ評論家)