阪神対ヤクルト 9回裏阪神1死一塁、マクガフのけん制球が梅野の顔面に直撃し矢野監督から声をかけられる(撮影・上山淳一)
阪神対ヤクルト 9回裏阪神1死一塁、マクガフのけん制球が梅野の顔面に直撃し矢野監督から声をかけられる(撮影・上山淳一)

「いい痛みです。ボールが当たったぐらいの顔でちょうどいいでしょ」。開口一番、梅野隆太郎から“男前自慢”が出た。歓喜のサヨナラ勝利でカード3連勝だ。そのお膳立ては右頬に球が当たった跡が残り、両軍唯一の1得点のホームを踏んだこの男だ。

0-0の9回、1死から先頭に入るとマクガフから四球を選んだ。スキあらば先の塁へとリードを取る。次打者マルテのとき、マクガフの投げたけん制球がワンバウンドになった。もちろん梅野は二塁へ走った。無事に到達したがその後、しゃがみこんでしまう。けん制球が右頬に当たっていたのだ。

めずらしく指揮官・矢野燿大、そしてバッテリーコーチの藤井彰人がベンチを飛び出した。正捕手に何かあれば一大事。しかし大事には至らなかった様子だ。ホッとするムードが漂う中で矢野は肩をたたいた。その横で藤井は土がついていた梅野の右頬をアンダーシャツの袖でぬぐっていた。

「ふくものがなかったので。ボールがかすめたんだと思う。脳とかは大丈夫そうだったんで」。現役時代に“男前”の異名を取った藤井。顔の汚れを気にしてさすがの? 行為だった。

今季中に梅野が負った左足薬指の骨折は完治していない。さらに昨秋に骨折した右手首も完全には治らないままのプレーが続く。そこに来て、顔の骨まで折れたら大変だったが、なんとかそれは免れたようだ。

「ケガはつきもののポジションなんで仕方ないです。それよりチームが勝ったのがよかった。ハルト(高橋遥人)も最高のピッチングだった。勝ち星はつけてあげられなかったけど後から投げる投手もみんな頑張ってくれて。だからこそ最後の場面があった。いい痛みです。これで乗り込んでいけます」

藤井から「男前」を授けてもらったこともあってか梅野はチームを背負う気概も見せ、キッパリ話した。

「乗り込む」の言葉どおりきょう24日からは横浜スタジアムでのDeNA3連戦だ。大昔から「横浜銀行」などと言われるが今季も相性がよく、ここまで7勝2敗と大きく勝ち越している。しかも前回、4月の横浜では3連勝をマークしている。

そんなに甘くないとは思うけれど期待は募る。なにしろ来週は本拠・甲子園での巨人3連戦が待つ。そこに向け、貯金は1つでも増やしておきたいのだ。(敬称略)

阪神対ヤクルト 6回表ヤクルト2死一、三塁、雄平の一ゴロで本塁をついた青木(右)はタッチアウト、捕手梅野(撮影・上山淳一)
阪神対ヤクルト 6回表ヤクルト2死一、三塁、雄平の一ゴロで本塁をついた青木(右)はタッチアウト、捕手梅野(撮影・上山淳一)