4回表阪神1死一、二塁、三盗を決める小幡(撮影・横山健太)
4回表阪神1死一、二塁、三盗を決める小幡(撮影・横山健太)

「正式な消化試合が始まりましたね」。デスクと電話で話しているとそんなことを言ったのでそのまま書いてみた。前日、巨人の優勝が決定。それまでも時間の問題だったが名将・原辰徳がきっちり宙に舞ったので、残り少ないシーズンはすべて消化試合になる。

何度も書いて恐縮だが消化試合で大事なことは何だろう。大山悠輔のようにタイトル争いに絡んでいる選手はそこに重点を置くのは当然だ。それ以外にチームとして、やるべきことは何か。少しでもプロ野球に興味のある人はお分かりだろう。若手の育成だ。

この時期になると来季以降を見据え、若い選手を起用する。DeNAがルーキーの森敬斗を初スタメンで使ったことなどが典型的だ。選手にすれば経験の意味で来季に直結する。

「みんな、好きなことを言いますけどね。野手なんて、使えるヤツがシーズンに1人でも出てくれば、もうけものなんですよ」

そう言ったのは広島で3連覇を続けていたときの指揮官・緒方孝市(日刊スポーツ評論家)だった。育成に定評のあるチームの監督でも、そのぐらいの構えでいるんだなと思った。それだけ新戦力が定着するのは難しいということだ。

10月16日ヤクルト戦の8回にプロ初安打、初適時打、初打点となる適時二塁打を放つ井上広大
10月16日ヤクルト戦の8回にプロ初安打、初適時打、初打点となる適時二塁打を放つ井上広大

今季を振り返って阪神にはどんな若手が出てきただろうか。ルーキー井上広大がチョロッと出てきたがほとんど“顔見せ興行”だった。実際に戦力として意味を持っていたのは、やはり2年目の小幡竜平だろう。

大量得点で勝ち、近年の好相性を発揮したDeNA22回戦。「いいな」と思ったのはこの日、途中出場となった小幡の2打席だ。8回は邪飛に倒れたが5回は1死一塁、6回は1死走者なしの場面でいずれも四球を選んで出塁した。

こんな試合だし。せっかくの機会だし。打てるものなら何でも打ちたいはず。きわどい球ならバットが出そうなものだ。それでもしっかり見きわめた姿はよかったと思う。

この小幡がどう育つか。球団はどう育てるか。そこが重要だ。言葉はよくないが“便利屋”的な選手は阪神には結構いる。内野ならどこでも…というタイプに、正直、その気配を感じてしまう。しかし、それでは「育った」とまでは言えない。レギュラーを狙う、その競争をさせる。そのためのレベルアップが大事だ。消化試合からオフ、来季へ。小幡も阪神もそこが注視される。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ナインに迎えられ笑顔を見せる小幡竜平(2020年8月27日撮影)
ナインに迎えられ笑顔を見せる小幡竜平(2020年8月27日撮影)