人の心の中は分からないし、見た目から受けるイメージとは違うことを考えている場合もあるだろう。それは分かる。それでも、やはり、思ってしまうのはこういうことだ。佐藤輝明よ、「今年の初心」に返った方がいいのではないか、ということである。
3月中旬、西武とのオープン戦を戦っていたとき、佐藤輝の三振が少ないという内容をここで書いた。三振し、悔しそうにする佐藤輝の様子を見て、キャンプ中の日刊スポーツのインタビュー談話を思い出したからだ。こんな話だった。
「タイトルは、それは全部取れたら取りたいですけど、本当に今は打率かなという風には思っています。やっぱり打率が高くなれば、もっと長打だったり打点も増えると思うので。しっかり強く振っていく中で、やっぱり打率というのを残していきたいですね」
その狙い通り、OP戦では長打にこだわらず、しっかりコンタクトし、中堅から逆方向を狙う打撃を心がけていたように思う。そんなポリシーで始まったのに、野球の神様は意地悪で彼の本気度を“試す”のだ。
3月28日、マツダスタジアムの開幕戦。1回1死一塁でいきなり広島の開幕投手・森下暢仁から右翼へ先制決勝2ランをたたき込んだ。これが効いて阪神は快勝したのだが、ここから佐藤輝の打撃が下降する。
その試合、続く3打席で2三振を含む3打席凡退。同29日は4打数無安打3三振に終わった。そして開幕4試合目のこの日は3打席連続三振。無死一、二塁で訪れた8回の第4打席も遊飛を打ち上げ「あ~っ」と悔しがったのである。
佐藤輝はちゃんと考えていた。打率が必要なのだ。それができて初めて本塁打も打点もいい数字が出る。分かっているのだ。だが「麻薬」というとキツいが、いきなり最高の結果で快感を覚えたことにより、開幕前に決めていた決意が自分でも気づかないうちに吹っ飛んでしまっている。そう見えて仕方がない。
それでも勝負の世界、いいとき、悪いときは必ずある。まだ始まったばかり。見せてほしいのは昨年までとは違う姿だ。分かっているなら実践する。ズルズルといかない、成長した姿だ。佐藤輝が打てばチームは乗るし、ダメなら、こんな結果になる。華やかなセレモニーで始まったホーム開幕戦は、佐藤輝がチームの中心、看板と逆の意味で示したような試合だ。(敬称略)高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




