178球の完全燃焼で、143キロ右腕の夏が終わった。延長13回を1人で投げ抜いた駒大苫小牧のエース伊藤大海(3年)は「試合自体が楽しくて、まだまだ投げたかった。やり切ったという気持ちでいっぱい」。悔いはない。晴れやかな笑顔には、満足感さえ漂っていた。

 不運な幕切れも、言い訳にはしなかった。6回2死走者なしから3連続長短打で追い付かれると、13回も2死走者なしから三塁打を許して、ピンチを招いた。最後は打ち取ったはずの打球が、三塁手の手前で大きくバウンドして左前適時打に。「9回を過ぎてからは、気持ちだけで投げた」というだけに、打球の行方を確認すると、思わず両膝に手をついて首をひねった。試合後の整列では、幼なじみの親友、北海のエース渡辺幹と固い握手を交わし「甲子園を決めてくれ」と夢を託した。

 昨春の甲子園で、2年生ながらOB田中将大(ヤンキース)もできなかった完封勝利を挙げて全国デビュー。だが、2度目の聖地は遠かった。卒業後は関東の大学に進学希望で「小さい頃からプロになるという夢を持っていた。大学で自分の投球を磨いて、上の世界でも通用するような投手になりたい」。新たな夢へ、笑顔で踏み出す。【中島宙恵】