東海大熊本星翔が35年ぶり2度目の甲子園切符を手にした。2回にエースが左上腕部に打球を受けるアクシデントも、4番の竹下翔悟内野手(2年)が3回に逆転3ラン。今年2月、練習場近くで起きた火災をナインとの連係プレーで消火作業に当たった男が大事な一戦でも救世主となった。
チームが苦しいときも、周囲が苦しいときも、救うのが4番の役目だ。東海大熊本星翔の竹下は、最後のアウトを一塁で捕球した瞬間、右手のこぶしを握り締めて優勝の喜びを味わった。
「本当にこのチームで優勝できて良かった」
35年ぶり2回目の優勝への壁は序盤に立ちはだかった。2回にエース山下朝陽投手(3年)が左上腕部に打球を受けるアクシデントがあった上にリードを許した。
1点差に追い上げて迎えた3回無死一、二塁から、竹下は高めに浮いたスライダーを逃さなかった。フルスイングした打球は両翼99メートルの左翼席に余裕で届いた。逆転3ランに満面の笑みでダイヤモンドを駆け巡った。
「山下さんが打球を受ける苦しい流れだった。そこで逆転できて良かった」
今夏から4番に座ったばかり。トレーニングと食事メニューを工夫して、体重を6キロ増の78キロとしてパワーアップ。高校通算7本塁打。そのうち今大会だけで3本塁打を放った。
今年2月に練習場近くの倉庫で火災が発生した。ナインが気づいて竹下も消火活動に参戦。「煙が出ていた。女性1人がパニックになっていた」。バケツリレー、ホースつなぎで食い止め、日本高野連から表彰を受けた。
エースの危機に、3回はチーム一丸だった。竹下の逆転弾の前には、中嶋大晴外野手(3年)は12球も粘って中前適時打。「投手にとって嫌な存在になりたい。カットを繰り返してヒットを打つ。そんな練習をしてきた」。相手のリズムを崩した上に、ベンチで山下を休ませる時間もつくった。
山下はチームに救われアクシデントにも完投勝利。野仲義高監督(37)も「山下がこうなって、絶対に負けられないという気持ちがあった」と選手を褒めた。苦しい場面を乗り越えて築いてきたチームワークは、甲子園でも大きな武器になる。【中牟田康】
◆東海大熊本星翔(せいしょう)1961年(昭36)東海大二高校として設立した私立校。12年から現校名へ変更。生徒数は1490人(女子582人)。野球部創部は61年で部員は119人。甲子園出場は春はなし、夏は2度目。主なOBは「ONE PIECE」の作者、尾田栄一郎(漫画家)、女子プロゴルファーは上田桃子、古閑美保ら。所在地は熊本市東区渡鹿9の1の1。飯田良輔校長。
◆Vへの足跡◆
1回戦13-0鹿本農
2回戦4-0九州学院
3回戦16-1芦北
準々決勝12-3熊本国府
準決勝9-2球磨工
決勝6-4熊本工