中京学院大中京が二刀流・元謙太(げん・けんだい)外野手(2年)の逆転満塁本塁打で作新学院に勝ち、春夏初の4強に駒を進めた。

1点を追う8回無死から3連続四球で満塁になると、甲子園がざわついた。打席には7番の元。作新学院・坂主が投じた4球目。インコース高めの直球を左翼スタンドに運んだ。右拳を高く突き上げ、ダイヤモンドを回った。「3年生が『お前に任せた』と言ってチャンスに回してくれた。3年生に感謝です」と満面の笑みを浮かべた。本塁に生還すると、最も仲のいい先輩で、寮が同部屋の不後(ふご)が「ありがとう。お前のおかげだ」と出迎えた。岐阜大会決勝から4戦連続の逆転勝ちだった。

昨秋の東海大会準決勝、東邦戦で、最大5点差から逆転負けした。敗戦後、選手たちは目の前のワンプレー、1球に集中するように心がけた。同校の練習場は山に囲まれている。球が山中に入っても率先して球を探しに行かなかったが、敗戦後はすぐに捕りに行くようになった。1球の重みを大切にした。

練習場には「食らいつけ! 1球に魂を込めて」という約10メートルの横断幕が張り出されている。練習が終わると、全員で指さしてその言葉を唱える。逆転の中京学院大中京を支える言葉になった。元は5回、8回の2度マウンドに上がり、リリーフでも勝利に貢献。「また3年生と野球ができるのがうれしい」と笑った。来年3月には校名が「中京」に変更される。中京学院大中京として最後の甲子園で、あきらめない球児たちが快進撃を続ける。【南谷竜則】