昨夏の甲子園で2打席連続本塁打を放った聖光学院(福島)・荒牧樹内野手(3年)は、グラブ職人などを志して新たなスタートを切る。

帝京平成大に進学決定も、昨年2月に発症した腰椎分離症が悪化し、選手継続を断念。こだわってきた野球用具などの知識をさらに深め、近い将来は憧れの存在でもある楽天浅村栄斗内野手(29)らトップ選手のグラブ担当も夢見ている。夏の福島大会13連覇を達成した経験も生かし、違った視点から日本一に挑む。

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聖光学院で主軸を担った荒牧が、次の夢を堂々と明かした。「子どもの頃からの夢だった甲子園出場は、かなった。でも日本一にはなれなかった。腰をケガして野球を本格的には出来ないが、グラブを一から作ってみたり、違う挑戦がしたい」。高校時代に何度も映像を見て研究した浅村の守備。「捕るまでの入り方、グラブの出し方などはすごい。技術と道具の両方でプレーは生まれる。高校野球にもプロ野球にもかかわれたら良い。有名な選手と一緒に道具を極められたら楽しい」と笑顔が絶えない。

道具を大切にしてきたことも誰にも負けない。こだわりもある。グラブは素手に近い感覚を好み、小さめがお気に入り。手入れも「重くなるから」と油はつけない。時には硬さを保つために冷蔵庫に保管することもある。型を作るために電子レンジなどを使って温める方法もあるが「自然にこだわって、しっかり捕れるようになることを待ちます」。早くも“職人”気質は備わりつつある。

昨春の県北支部で県内連勝記録が49でストップ。県大会も敗れ、夏の13連覇を危ぶむ声もあったが、打破した。海星(長崎)との甲子園初戦(2回戦)では、7回に左中間へ公式戦初本塁打。9回にも中越え特大弾。ホームランボールは、都内の実家リビングの棚に、土と一緒に並ぶ宝物だ。

「結果を残せたことは親など支えてくれた人への恩返しになったので、うれしい。次は自分が選手を支える立場になりたい。地元の少年野球で教えたりもしたいです」。常勝軍団で学んだ喜びや挫折も胸に、夢を追い続ける。【鎌田直秀】

◆荒牧樹(あらまき・みき)2001年(平13)4月8日生まれ、東京・東久留米市出身。小1に久留米スターズで野球を始め、東久留米南中では小平シニアでプレー。日本代表として全米選手権大会に出場。聖光学院では2年センバツからベンチ入り。171センチ、71キロ。右投げ右打ち。家族は両親と兄。