聖光学院が6-0で光南を下し、夏の福島“14”連覇を達成した。

2回に内山連希主将(3年)の適時二塁打で先制し、3回には4番畠中子龍内野手(3年)が2点適時打。6回には光南2番手の国井飛河投手(3年)からも2点を奪い突き放した。投げてはエース舘池亮佑投手(3年)の2安打完封劇で王座を守った。選手権中止で代替大会となったが、戦後最長の夏の地方大会連覇記録を更新し、戦前を含めても和歌山中(現桐蔭)に並ぶ偉業となった。福島代表で9日開幕の東北大会(宮城・石巻市民球場)に出場する。

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甲子園がなくなったからこそ、真の強さが際立った。福島の絶対王者・聖光学院が、最後まで隙を見せない横綱相撲で、史上初の代替大会を制した。「14連覇」の大記録がかかっていても、選手たちは目の前のプレーに集中し続けた。12安打のうち、長打は内山連希主将(3年)の二塁打1本のみ。欲を捨てつなぎの野球を実践した。斎藤智也監督(57)も「決勝だとか、最終章だとか意識過剰にならず、自然体でやってくれた。頼もしかったね。素晴らしい試合だと思う」とナインをたたえた。

これまで春夏21度の甲子園出場に導いた斎藤監督にとっても、大会中止は未曽有の事態だった。全国から甲子園を夢見て選手が集まってくる。「失望の中から希望を見いだすのは難しい。甲子園がなくても、いかにその差を0にしたまま、元来の夏と同じ、執念深い野球をやるかが重要な年だった」。

ミーティングを何度も重ね、選手に繰り返し伝えた。「今年の夏はコロナのせいにしなかったチームが優勝する。もういいや、とあきらめるのは簡単。将来、父親になった時に、『お父さん、甲子園に出たんだ、すごいね』と尊敬されるより、『お父さんの代は甲子園がなくなったけど、言い訳をしないで仲間のことを裏切らず最後までやり切ったんだぞ』とでは、どっちが子どもは尊敬するだろうか。胸を張ってそう言える父親になってほしい」。

昨秋は県大会初戦で学法石川にコールド負け。コロナ禍にもめげず練習を積んではい上がった。「ふがいなかった自分たちがどれだけたくましくなったのかを、発表するのがこの夏の大会。成長した姿をグラウンドに刻んでくれたのが何よりもうれしい」と斎藤監督は、たくましく前を向いた選手たちが誇らしかった。

内山主将は歓喜の輪で涙があふれた。「ここまでやってきた喜びと、優勝しても甲子園に行けない悲しさも湧いてきた」と2種類の感情が交じった涙だった。優勝の記念品は聖光学院OBが、福島の球児たちを励まそうと自主的に持ち寄った甲子園の土。くしくも聖地を踏めなかった後輩たちの手に渡った。斎藤監督は最後に「かっこいいチームになったんじゃないかな。甲子園があった時、どういう試合になったのか見てみたかったよね」。成長を感じたからこその、悔いをのぞかせた。【野上伸悟】

▽聖光学院・小野大輔捕手(3年=舘池を好リード) 「心の甲子園」という目標を達成できて良かった。東北大会では泥くさく戦っていきたい」

▽聖光学院・坂本寅泰外野手(2年=ベンチ入り唯一の下級生は6回に適時打) 先輩たちに負けをつけさせないためにも自分の役割を貫き通した。先輩たちへの感謝の気持ちを持って東北大会も戦いたい。