中京大中京(愛知)の高橋宏斗投手(3年)が、智弁学園(奈良)相手に150キロ台連発の圧倒ピッチで、延長10回タイブレークのサヨナラ勝ちを導いた。9回2死からこの日最速の153キロをマークするなど、抜群のスタミナで11奪三振。昨秋から公式戦無敗の28連勝で高校野球を終えた。基本は大学進学希望だが、この日初めて高卒からのプロ入りの可能性も明かした。12球団スカウトの評価は高まるばかりで、秋も注目の的になりそうだ。

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その瞬間、高橋がほえた。9回2死一塁からの139球目。この日の最速153キロを外角に決めて見逃し三振を奪った。交流試合初のタイブレークとなった10回無死一、二塁からも全開。10球中9球、威力ある真っすぐを投じて3者凡退に仕留め、その裏のサヨナラ勝ちを呼び込んだ。「変化球で打たれたら、悔いしか残らないなと思っていたので、一番自信のある直球中心でいきました」。149球中、35球が150キロ台のド迫力ピッチ。昨秋の新チーム発足から公式戦28連勝無敗で高校野球を終えた。

2日前の10日、愛知独自大会決勝の愛産大工戦で8回から救援登板し、自己最速の154キロをたたき出した。あこがれの甲子園初登板で更新はならなかったが、中1日で10回11奪三振の完投劇。中盤に3点を失い崩れかけても、セットポジションのグラブの位置を修正し、フォームを安定させた。体力、修正能力でもプロのスカウトを喜ばせた。

「本当は中指と人さし指の間を開けた方が制球しやすいけど、つけた方が回転数が増し、強い球が投げられる」。指2本を離さず、剛球に磨きをかけてきた。

今や世代NO・1的な存在だが、豊田シニア時代は無名。多くの強豪高校の監督、指導者が視察した中学2年時の大会。たまたまトイレで一緒になった大阪桐蔭・西谷浩一監督(50)は身長は173センチの高橋少年を覚えていた。「あの時はまだ背も高くなく、ほっそりしていた」。中3の最速は134キロで高1で140キロ。鍛錬を重ねて最速154キロの剛腕に成長した。

新型コロナウイルスで部活動停止の時期は、慶大で投手だったOBの兄・伶介さん(23)と自宅でキャッチボール。直球の威力をアップさせるヒントももらった。そんな兄に憧れ、慶大などの大学への進学が基本線だ。だがこの日、「まだ、自分の中でプロ志望届を出す選択肢はあると思う」と初めて高校からのプロも視野に入れていることを明かした。プロ志望届を出せば、ドラフト1位指名される可能性も十分。秋の高校球界も、高橋が注目の的になりそうだ。【石橋隆雄】

◆高橋宏斗(たかはし・ひろと)2002年(平14)8月9日生まれ、愛知県出身。三郷小2年から三郷ファイターズで野球を始め、6年時にドラゴンズジュニアに選ばれた。尾張旭東中では豊田シニアでプレーし、3年夏は全国16強。中京大中京では1年夏からベンチ入り。昨秋の明治神宮大会優勝を導いた。183センチ、84キロ。右投げ右打ち。

智弁学園・前川(高橋から右前打)最後の夏ということで、すごい球を投げているなと。自分も負けないって、真剣勝負を楽しめました

智弁学園・小坂監督 すごいの一言ですね。まっすぐで153出されると、打てというのが難しいですね。スライダーが抜けてることはあったが、うちが対応できなかった。