甲子園の黒土から、水たまりが消えた。

阪神園芸のグラウンドキーパーは午前9時55分、マウンドと打席に覆っていた防水シートを外し、土を補充し、トンボをかける。そして、10時2分からマウンドを中心に反時計回りで、8人が土をならしていく。やがて10人に増え、内野全体に渦ができる。10時10分からコーチャーズボックス、内野の白線を引いていく。

ノースアジア大明桜(秋田)と帯広農(北北海道)のナインが球場に姿を現すと、拍手が起こった。キャッチボールを始めた。その後も、グラウンドには白線が描かれていく。10時28分、シートノック開始を告げるサイレンが銀傘に響いた。まさかの長雨に翻弄(ほんろう)された甲子園に、間もなく球音が戻ってくる。