東北学院(宮城)が第103回全国高校野球選手権の出場を辞退したことを受け、大会第9日の21日の2回戦で対戦が決まっていた松商学園(長野)の足立修監督(54)は、驚きを隠せなかった。

対戦相手辞退の一報を受け「びっくりしました。当事者ではない僕が言うのは失礼かもしれませんけど、本当に相手の選手、監督、関係者の方、保護者の方には心中察するにあまりある思いです。同じ思いをして今まで練習を積み重ねて、甲子園を目指してきた過程は全ての高校が同じ。『さあこれから』と戦う中で、責任を持ってやってきた中で、起きてしまったこと。選手や監督を思うと心中察するに余りあると思います」と話した。

コロナ禍で、出場校は気を配りながら練習を積み重ねてきた。両校は1回戦を勝ち上がり、2回戦に向けて準備を進めてきた。「お互いが全力を尽くして試合をするのがベストだと思っていた。我々に何か、東北学院さんへの思いがあると思う。それはしっかりと私たちが全力尽くすことが、同じ仲間として当然のことだろうなと。高校野球でここまでたどりついた仲間ですから。軽々しくは言えないですが、今の心境は想像がつかないほどのことが高校生、指導者の中にあると思います」と思いやった。

さらに「同じ仲間として舞台に立てなかった思いを言葉だけにするのではだめだと思う。甲子園大会に全力で歩むことが、私たちにせめてできることなのだろうなと思います」と続けた。

宮崎商に続き2校目の辞退となっただけに、選手のメンタル面への影響も懸念される。「同じ歩みをしてきた仲間。選手には、ちゃんとやらないといけないよと言いたい。東北学院さんの思いも背負って、その思いを考えながらプレーしないといけないよ、と話したい」とした。

ライバルながら、同じ高校野球という舞台で戦う仲間でもある両チーム。松商学園ナインは、東北学院の思いも背負って3回戦へ臨む。

◆過去の全国大会出場辞退 病気によるケースでは1922年(大11)8月の第8回大会(鳴尾球場)で、新潟商が大会前に棄権を申し出た。部員11人の新潟商は北陸代表となった後、4番を打つエースが食あたりのため40度の発熱。10人でも参加できたが、学校長が「ぶざまな負け方は学校の名誉にかかわる」と判断し、棄権した。北陸準優勝の長岡中を代替校とする案も出たが、選手を電報で呼び集めても間に合う見込みがなく、北陸代表を欠場として大会を開いた。このほか春夏とも不祥事による辞退校はあったが、いずれも代替校が出場。不戦勝、不戦敗の例はない。