ポジション争いに波乱を起こす男が出現した。阪神中谷将大外野手(24)が日本ハムとのオープン戦に「6番一塁」で出場。左中間を破る2点二塁打に1号2ランを放ち、2安打4打点と暴れた。金本知憲監督(48)は一塁起用だけでなく、レフト高山とのバトルにも期待を膨らませた。不動と見られた外野陣にも一石を投じる活躍だ。

 嵐を呼ぶ男か。オープン戦の初陣で、中谷が暴れた。5回表無死満塁で、エスコバーの直球を捉えた。打球は左中間フェンスに直撃。2点を追加するタイムリー二塁打だ。7回には石川直の高めストレートを振り抜き、左翼に1号2ランを放つ。2安打4打点の活躍で成長の跡を見せた。

 「ストレートに弱いとずっと言われていたので、しっかり捉えられてよかった。やってきたことができている」

 変化球は打てるが、速球打ちが課題だ。2つの快音は苦手克服に期待をもたせる。さらに言えば、優しいと言われる性格にも変化が起きたかもしれない。中谷は1打席目を振り返った。「引いた感じがあった」。有原に対し、3ボールから1球ストライクを見逃し、二飛に倒れた。自らの消極的な姿勢を反省した。一転、攻めに転じ、結果を残した。

 中谷が台頭すれば、ポジション争いはさらに面白くなる。捕手原口、一塁中谷で打線も厚みが出る。それだけではない。金本監督は言った。「外野もできる。高山が打てない、守れないとなれば、そこはもちろん、実力が上な者が試合に出るわけだから」。昨年の新人王は左翼の最有力候補。福留と糸井が並ぶ外野陣は付けいる隙がないように見える。そこに指揮官は一石を投じた。この日マルチ安打を記録した高山も油断すれば、ポジションを失う。左翼のバトルをあおった。

 「アピールするしかないので、これからもドンドン、打っていきたい」。1試合の結果にも、中谷に浮かれた様子はない。開幕オーダーはまだ見えないのも、伸びしろを計れない若虎がいるから。レギュラー争いは、波乱含みだ。【田口真一郎】