土壇場で大器の片りんを見せた。ロッテのドラフト1位、安田が2点を追う9回2死満塁でプロ初安打、初打点となる2点適時打を放った。カウント2-2からの6球目、外角低めのフォークに食らいついての右前打。10日のデビューから12打席目で出た一打で試合を振り出しに戻した。「ずっとチャンスで打ててなかった。打席で膝が震えてたんですが、あの場面で1本出てよかった」と安堵(あんど)した。

 手にしていたのは、松やにで真っ黒のバットだった。2回の第1打席までは真新しいバットを使っていたが、前日までの2戦を含め5度の得点圏で凡退。「清田さんに『練習用でいってみろよ』と言われて」。形状は86センチ、890グラムのメープル素材で試合用と同じでも、心持ちが違った。この日の試合前フリー打撃で5本の柵越えを打った、汗の染み込んだ相棒。「縁起がいいので、もう少し使っていきたい」とうなずいた。

 家族がスタンドで見守る地元大阪で1本目が出たが、チームは延長10回サヨナラ負け。口元を引き締め「これで満足せず、勝利に貢献できるように1本1本、積み重ねていきたい」と誓った。履正社で高校通算65本塁打を放った、大きな期待を背負うルーキー。甲子園の季節に、プロの第1歩を踏み出した。【佐竹実】