1発で勝てる。今年のロッテを象徴するアーチだった。同点の9回2死一塁、田村龍弘捕手は日本ハム秋吉のスライダーを待った。2球目の低めをさばく。左へ高く上がった打球に勝利を確信した。「歓声でいったと思った。抑えてくれた益田さんに勝ちをつけたかった」。自身プロ初のサヨナラ弾。本塁で出迎えた仲間たちにもみくちゃにされた。

田村弾は今季チーム147本目。6回には4番の一振りが球団史を塗り替えていた。2死から井上が自己最多タイとなる24号ソロ。92年の本拠地千葉移転後、最多を更新するシーズン146号で劣勢だった流れを変えた。練習では大村打撃コーチの発案で、今季のホームラン集の映像をマリンビジョンに流してイメージを強めた。「24本(どまり)は誰も期待してない。30本しっかり打てるように頑張る」。新記録にふさわしい4番の仕事だった。

12球団ワースト78本塁打に終わった昨季とは見違えた。レアードの奮闘、ホームランラグーンの新設と外野フェンスが低くなったことが要因に挙げられるが、攻めの気持ちにも大きく寄与している。井口監督は「今年はしっかり振り抜けば入ると、全員がスイングしてくれている」。9連戦を勝ち越し、3位楽天とゲーム差なしに迫った。得意のソフトバンク4連戦で、一気に3位に駆け上がる。【鎌田良美】