中日大野雄大投手(30)が14日、阪神23回戦(ナゴヤドーム)でノーヒットノーランを達成した。打者29人、126球で、史上81人目(通算92度目)の大記録を刻んだ。

6日のソフトバンク千賀に続く達成に「千賀はファンにため息をつかせないように投げたけど、オレはため息つかせそうやな」と、笑いを交えて喜びを表現。中日では13年山井以来、巨人と並び球界最多12人目の快挙を達成した。

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無邪気な子どものように、大野雄が跳びはねた。この日の最速タイ。こん身の151キロ直球を近本に捉えられたが、三塁・高橋のグラブに収まるのを見届けると、マウンドの上で3度ジャンプして喜んだ。

「まさか。信じられない気分。今日は無駄な力がなく、バランスよくいろんな球が投げられた。全部良かった」。直球もフォークボールもツーシームもさえた。初めて走者を出した6回1死二塁で、代打上本をフォークボールで空振り三振。7回、大山に初めて四球を許しても乱れない。主砲マルテを内角への139キロ直球で見逃しの三振に取った。打者29人に対し、失策、1四球の2出塁を許しただけで、山本昌に続くナゴヤドームでの竜2人目のノーヒッターになった。

昨年はプロ1年目以来の未勝利に終わった。終始、ネガティブな思考に支配された。「序盤に打たれたら敗戦コメントを考えていた」と振り返る。昨秋キャンプから塚本コンディショニングコーチと改善に取り組んだ。同コーチから「プロは実現性が高い能力がある。ヒーローになると思っていかないと」と提案され、プラス思考への切り替えを意識。9勝8敗、防御率2・59。大野雄は笑顔で「間違いなく9年で最も安定した成績を出せている。その(プラス思考の)おかげ」と明かした。

ソフトバンク千賀が6日、12球団で今季初のノーヒットノーランを達成した。「彼はいつかする人。僕には縁がないと思っていた」と第三者の目で見ていたが、自身もやりとげた。「千賀が『ファンのため息を聞きたくなかったから頑張った』と言ってたが、オレはため息つかせそうやなと思って投げてました」。お立ち台では大野雄節で、ファンも沸かせた。

自宅のリビングルームには、1枚の大きな額がある。かつて選出された侍ジャパンのユニホーム。大学時代から日本代表にあこがれ、プロでもこだわり続ける。0勝に終わった昨季も、そのユニホームを見て復活を誓い、闘志をかきたてた。プロ初のノーヒットノーランの記念球。「大事にします」。これからの野球人生の力の源が、また1つ増えた。【伊東大介】

◆大野雄大(おおの・ゆうだい)1988年(昭63)9月26日、京都府生まれ。京都外大西では2年夏、3年春に甲子園出場(2年夏は登板なし)。佛教大では京滋大学リーグMVP3度。10年ドラフト1位で中日入団。15年プレミア12で侍ジャパン選出。183センチ、83キロ。左投げ左打ち。今季推定年俸6000万円。

▽中日加藤(スタメンで大野雄をリードも5回にマルテのバットを左手に受け、交代) 変化球が低めに決まっていた。途中で病院に行ったが、速報で見ていた。チームが勝ってよかったです。

▽中日大野奨(6回からマスクを被り、リード) (ノーヒットノーランは)初めて。なかなか経験できないことを経験させてもらった。今日はフォークボールの高さの間違えがなかった。

▽中日与田監督(大野雄について) 今日は4、5回から(記録を)やれるかなと思った。球のばらつきも少なかった。12年の侍ジャパンコーチのときに雄大と初めて話して、球界のエースになれる雰囲気を感じていた。

▽阪神木浪 全て良かったと思います。甘いボールを仕留めきれなかったというのはあります。

▽阪神マルテ いつも通りのいいピッチャーでしたが、今日は特に良かった。彼にとってはすごくいい1日になったと思う。ゾーンに来た球をしっかり打とうと思っていたけど、彼が一枚上だった気がします。