日刊スポーツ評論家陣が語る「野球塾」は元阪神監督・真弓明信氏(66)が今季も解消できなかった若手の伸び悩みの原因を分析。不振にあえぐ大山悠輔内野手(24)を例に挙げながら、課題克服の鍵を提言した。【取材・構成=田口真一郎】

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矢野阪神は14年連続で優勝を逃し、Aクラス入りも難しい状況にある。チーム89本塁打はリーグ5位。この数字を象徴に、今季も攻撃力不足に苦しんだ。近本、木浪の新人選手をのぞけば、4番を期待された大山ら若手選手の伸び悩みは深刻だ。シーズンも残り8試合。来季につなげることはできるのか。

真弓氏 例えば、大山は昨年9月に9本塁打と量産した。あれだけのセンスを持っていて、打てないのはおかしい。もっと良くなりたい、と思って取り組んでいるが、おそらく、何か大きな勘違いをしているのだろう。メンタルを指摘する声もあるが、打てないと精神状態は悪くなるもの。間違いなく、フォーム的な問題だ。

現在の大山を分析。打者の基本に立ち返ることを提言した。

真弓氏 最近はあまり足腰の使い方を言われなくなったが、下半身でリードすれば、バットが内側から出て、最短距離で捉えることができる。しかし大山の場合は、軸となる右足が動く。腰を回転させるのに軸足は重要なのだが、そこがズレると、下半身を使っていないのに等しい。上体に頼ると、バットが止まらず、カットボールやツーシームなど微妙な変化に対応できなくなる。それなら球種を見極めてからバットを振ろうとするが、それでは間に合わない。大山がタイミングの面で立ち遅れるのは、そういう所にある。下半身主導なら、打ちにいっても、バットのヘッドが出てきていない分、変化に対応できる。

もちろん、選手は懸命に課題を克服しようと努力している。しかし方向性を誤れば、より悪化することもある。

真弓氏 みんな、一生懸命、弱点を直そうとするが、解釈を間違えれば、余計に悪くなる。「体が開かないように」「崩されないように」と自分の形にばかりこだわっていても、投手はそこを崩そうと投げてくる。体が開いても、泳がされて片手でも、バットの芯で打つ。そんな練習を考えていかないといけない。いいポイントで数多く打つことが大事だ。打撃投手の球でも、常に同じボールが来るわけではない。タイミングが外れても、しっかりとバットに当てることを考えれば、良くなるはずだ。大山は自分の打つポイントをもう1回、見直したほうがいい。いい時の自分の映像を取ってあるはずだ。いいバッターがどんなポイントで打っているのか見てもいい。

頭で理解しながら、打撃の基本にシンプルに立ち返るべきと提言する。シーズンが終わり、秋季キャンプ、オフ、春季キャンプというサイクルがやってくる。チーム全体で打力向上に向き合わないと、来季の開幕で再び同じ苦しみを味わう。

真弓氏 何がダメで何をすべきか。課題をしっかり見つけてクリアする。この時期からでも徹底的にやらないと。現場だけでなく、球団も真剣に取り組まないと、毎年、同じことの繰り返しになる。