35年ぶりの虎日本一へ、背番号16が先陣を切る。阪神矢野燿大監督(51)が3月20日ヤクルト戦(神宮)の開幕投手に西勇輝投手(29)を指名したことを18日、明言した。この日、西勇は今キャンプ実戦初登板するなど順調に調整を進めており、矢野監督は全幅の信頼を寄せる右腕に大役を託した。

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矢野監督が西勇に重要なマウンドを任せたことを、自ら報道陣に切り出した。「開幕投手は西って決めてんねんけど。開幕は西。西しかおらんやろ」。この日、西勇は紅白戦に先発し、実戦初登板。シーズン開幕に向けて1つのステップを踏んだ。指揮官は背番号16右腕を3・20ヤクルト戦に送り出すことを明言。絶対的な信頼感は、理由を語る言葉にもにじみ出た。

「練習姿勢と、うちの投手陣を引っ張っていってくれる。西の背中を追っていくというのが、うちの今の投手陣の理想。その姿をしっかり見せてくれている。西に任せたい」

すでに16日までの前クール期間中に直接伝えていたという。1月下旬の合同コーチ会議後に、矢野監督は「本命に近い」と語るなど、昨年チームトップの10勝を挙げた右腕を、開幕投手の最有力候補として挙げてきた。この日の紅白戦で西勇は2本の本塁打を浴びるなど1回4安打3失点だったが、首脳陣の信頼が揺らぐことなどない。指揮官は「任しておいて十分。練習姿勢も中身もしっかりやってくれている。何の心配もしていない」と言い切った。

苦しいときでも野球を楽しむ気持ちを忘れない-。どんな状況でも笑顔を忘れない西勇は、矢野阪神の目指す野球を映し出してきた。「スローガン(It's 勝笑 Time! オレがヤル)を一番体現してくれるのは西」(矢野監督)。青柳や高橋ら若手陣にも惜しみなくアドバイスを送り、引っ張ってきた右腕にとって、ふさわしいマウンドと言える。

本人はこの日、打者に投げたことが収穫か、との問いに「その通り」とだけコメントするなど、多くを語ることはなかった。キャンプも後半に入り、体を追い込んでいる時期でもある。1つずつ調整の段階を上げ、前に進んでいることが何よりの好材料だ。35年ぶりの日本一を目指す今季のタイガース。その挑戦の扉は、西勇が開く。【松井周治】

▽阪神金村投手コーチ(西について)「何も心配していない。ちょっと疲れが出たかなと。試合前のブルペンでもいつものコントロールじゃなかったし、疲れが出たかなと」

▼西勇が開幕投手となれば、日本人では14年能見以来6年ぶり。日本人右腕に限れば、10年安藤以来10年ぶりだ。

▼国内他球団からの移籍投手が開幕投手となると、07年下柳(前日本ハム)以来、13年ぶり。白星を飾れば、79年江本(前南海)以来、実に41年ぶりとなる。

▼今季の開幕戦、ヤクルト戦を行う神宮で西勇は通算3試合に投げ2勝0敗、防御率2・81の好成績。阪神移籍の昨季は1試合で、8月24日に5回4失点ながら白星。オリックス時代も含め、この3試合でチームは全勝だ。

▼なお西勇自身の開幕投手は過去1度。オリックス時代の18年ソフトバンク戦に先発し、7回1/3を2失点で負け投手に。今季こそ初勝利を飾りたい。