悩める和製大砲に、指揮官のメス! 阪神矢野燿大監督(51)が、実戦で苦しんでいる大山悠輔内野手(25)の直接指導に乗り出した。キャンプ打ち上げ目前の25日、大山に実戦に即した練習の必要性を伝えた。今キャンプの実戦で打率1割8分4厘。悲願Vのキーマンでもある若きスラッガーの打力向上を願った。

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フリー打撃を終えた大山に、矢野監督が歩み寄った。約10分。新井打撃コーチをはさみ、指揮官が大山に言葉を送り続け、背番号3は何度も返事をしながら、うなずくシーンがあった。その後、大山はロングティー打撃へ。再び矢野監督が付き添う場面が見られた。キャンプ打ち上げ前日の直接指導。成長を願う思いが行動に表れた。

矢野監督 試合になったら(練習とは)ズレが出るからね。試合で打たないと意味ないから。(実戦では)相手も打たせないようにしてくる。練習で気持ちよく打つ日もあってもいいと思うが、気持ち悪く、気持ちよく打たないというか、そういう部分も必要。

大山はこのキャンプ、実戦で結果が出ていない。ヒット性の当たりはあるが、紅白戦を含めた実戦10試合の成績は、38打数7安打1打点で打率1割8分4厘。本塁打も0本で持ち味の長打力が鳴りをひそめている。矢野監督は“捕手目線”からも指摘した。

矢野監督 捕手から見て、大山にはこうされたら嫌という部分が…。もっと引き込んで打つというか。ポイントが前で打つというのはいい部分でもあるけれど、実戦では崩される。打てるゾーンの幅をつくるというところで、もうちょっと引き込んで打つというか、そういう部分が必要じゃないか、という話をした。

あの手この手で崩してくる相手投手を想定し、練習から1つのポイントだけで球を仕留めるのではなく、打ち返せるゾーンを広げることの重要性を伝えたようだ。大山はマルテと三塁のポジションを争っており、互いの成長こそがチーム力アップに直結する。優勝へ欠かせないピース。だからこそ指揮官も苦しむ大山にメスを入れたに違いない。

大山は指導を受けた後、特打では100スイング中、60本が中堅から右方向の打球だった。従来より捕手側に球を引き込もうという意識がうかがえた。

大山 いろいろ教えてもらいました。まだ映像を見ていないですし、映像を見て、自分の中でしっかり整理ができたら、またお話しさせてもらいます。

完全に理解・吸収し、実践することに意味があるだけに、大山はそう話すにとどめた。26日はキャンプ最終日。その後はいよいよ開幕に向けた最終調整の時期に入る。背番号3のバットから快音が響くか、注目される。【松井周治】

▽阪神新井打撃コーチ(大山について)「幅のあるバッティングをしようと。気持ちよく打つことも大事だけど、試合になれば変化球も来るわけだし。本人も納得して取り組んでいたし、意味のある時間だと思う」