阪神北條史也内野手(25)が開幕前最後の甲子園で決勝2ランを放った。ソフトバンク戦に「2番遊撃」で先発し、3回に左腕和田から左翼へ今季実戦3号。6回の二塁打と合わせてマルチ安打で、同学年の木浪と争う開幕ショートへアピールした。3年連続日本一軍団に勝ち越した阪神は、2日に再開した練習試合で5勝1敗の“首位”につける。次に聖地で試合をするのは7日7日で、いよいよ長期ロードに出る。

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遊撃は譲らない。チームの勢いに北條も乗った。0-0の3回2死一塁。ベテラン和田を捉えた。「真っすぐに負けないようにと思ってました」。2-2から甘く中に入った139キロ直球を左翼席に運び去った。初回の第1打席は同じカウントからの直球に差し込まれて右飛。「差されないように。前の打席の反省を生かして打つことができた」。試合の中で対応して先制2ランにつなげた。6回はフルカウントから二保の6球目を左中間へはじき返し、二塁打でチャンスメーク。遊撃を争う木浪がベンチスタートの中、結果を出した。

これでチームは練習試合6戦で10発となった。アーチ攻勢をかけながら19日の開幕に向かっている。昨季はリーグ5位の94本塁打、両リーグ最低の538得点に終わったが、今季はボーアらの加入で打線が活性化。課題だった得点力不足は影を潜め、強力投手陣と打線がかみ合いつつある。

小技が持ち味の北條が放った1発もそんな変化の1つで、矢野監督は「あのスイングでひと振りで決めたのは価値ある打撃」と評価した。井上打撃コーチは三振数など改善点を挙げた上で打線の底上げに言及した。「1発が少ないと言われていたチームの意識を変えてやっていこうと取り組んでいる中、本塁打が出ているのは選手みんなが意識を持ってやってくれていることだという手応えはある」。全体練習後の居残りロングティーなど意識改革の成果は見え始めている。

甲子園2カードで広島に3連勝の後、ソフトバンクには12年交流戦以来の勝ち越し。5勝1敗で“首位”につける。この日はボーアや福留ら助っ人、ベテラン勢に休養を与え、開幕1軍をつかもうと必死な若手中心のオーダーで勝利。競争が続く北條も「開幕ももうすぐなので、結果で勝ち取るんだという思いでやってます」と開幕ショートを守るイメージを強く描いた。

今後は広島、オリックスと敵地で練習試合を3試合ずつ行い、開幕を迎える。甲子園での次戦はちょうど1カ月後、7日7日の巨人戦だ。矢野監督は約束した。「やっぱりここで野球できる幸せと、ここでやる野球をタイガースファンは一番好きだと思う。まずはその前にしっかりとした戦いで、帰ってこられるように頑張ってきます」。最高の締めくくりで、勝負の長期ロードに飛び出していく。【奥田隼人】