マルちゃんが、待望の勝利をつかんだ。日本ハムのニック・マルティネス投手(29)が、2年ぶりの白星を挙げた。

8日オリックス戦(京セラドーム大阪)に先発し、6回5安打1失点。大量援護にも恵まれ、18年9月9日楽天戦以来、668日ぶりの勝ち星を手にした。右前腕の故障で昨季は棒に振った来日3年目の助っ人、先発ローテーションの柱の1人としてフル回転する。

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マルちゃんが、パワーアップした姿を証明した。4回2死一、三塁。じっくりと間を使い、ロドリゲスの打球を自らさばき、投ゴロに打ち取った。悔しさで叫び声をあげたロドリゲスを横目に、小さく拳を握った。6回5安打1失点で「とても気持ちいい」。ヒーローインタビューでは、静かにほほ笑んだ。

空白の1年間を経て、帰ってきた。昨年4月、不安を抱えていた右前腕の精密検査を受けるため米国に一時帰国した。「万全な状態でシーズンに挑もうと思った」。来日1年目に2ケタ10勝。先発ローテーションの一角として、大きな期待を寄せられながら決断した。

マルティネス リハビリの期間は長く感じた。本当に腕が治るのか、キャッチボールでも投げられるのか。疑心暗鬼になることもあった。

持ち前のポジティブさが、不安で支配されていた。力になったのは「家族の存在が、とても大きかった」。陽気な妻キンバリーさんと2歳の女の子、ヴェラちゃんの声援。そして「1年間、投げられない時にファンの声援は変わらず届いていた」と感謝した。

進化したのは2つ。コンディションの向上と、制球に磨きをかけた。球数は今季最多104球。体力面の不安を拭い去り、米国での約1カ月間のリハビリで精神的な強さを得た。今では「時間を有効活用できた」と笑って振り返る。栗山監督は「良かったね。早く勝たせてあげたかった。これで前に進んでくれると思う」と、さらに期待した。

668日ぶりの白星に、新たな誓いを立てた。「ガムシャラに、できる限りのことをして1年目の自分を超えていきたい」。今年3月の実戦復帰マウンドでは、涙をこらえていた。待望の勝利に照らされ、今度は笑顔で歩き始めた。【田中彩友美】