阪神西勇輝投手(29)が今季チーム一番乗りとなる完封勝利を挙げた。

9回。あわやホームランの打球を中堅手近本がフェンスに激突しながら好捕すると、しきりに拍手を送った。頭の上で30回。近本の無事を確認すると、また10回手をたたいた。「本当に味方のいいプレーが出た。リズム良くできたというのが一番です」。これで青柳と並んでチーム最多の6勝目とした。

立ち上がりから持ち味全開。多彩な変化球を低めに集めた。許した安打は4本のみ。うち5、7、8回は後続を併殺打で片づけた。「コントロールが良かった」。19年4月7日広島戦以来、自身8度目の完封勝利を無四球で飾った。「本当に完投できるってなかなか難しい時代になってきた。その完投ができたプラスこの13連戦。中継ぎを休ませることができたっていうのはすごく大きい」。連戦中の移動日ゲームでブルペン陣にもたらした休息。エースの気概がにじんだ。

昨季オリックスからFA移籍し、入団会見では「ファンが多い。ヤジもありましたけど」と素直な思いを話していた。それでも味方になればこれ以上強いものはなかった。1年目は、遠征先でも駆けつけるファンの多さに驚いた。日常の中で、ファンに声を掛けられる機会も増え、球場では一緒に戦ってくれた。「ヤジなんかない。あったかいというか。いいことしか入ってこなかった」。この日も背中を押され、プロ12年目で初めて甲子園で完封。温かい拍手に包まれた。

お立ち台には梅野と2人で上がった。昨年、ゴールデングラブ賞をともに受賞した黄金バッテリー。開幕前には「勝ち星を増やして、負けない投手を目標にやっていこう」と2人で約束していた。そんな愛妻が8回にソロで援護してくれた。ヒーローインタビューを受けながら「ありがとう」と感謝の言葉を送った。

矢野監督も「中継ぎも登板が多かったので、みんな休めて勝てたっていうのは本当に大きい」と通算90勝目となったエースをたたえた。逆転Vはまだ諦めていない。マウンドに立ち続けたエースが、その気概を証明した。【只松憲】