涙雨をキャプテンが、歓喜の雨に変えた。楽天茂木栄五郎内野手(26)が逆転サヨナラ7号2ランを放ち、日本ハムとの延長10回の激闘を制した。1点リードの9回に雨脚が強まり、同点。延長10回に勝ち越しまで許したが、主将が13試合ぶりの1発で決めた。感極まった三木監督とベンチ前で熱く抱き合った。チーム一丸で1勝をつかみ取り、今季最長タイの4連敗で止めた。

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【あ】めは少し弱まっていた。1点を追う延長10回1死二塁。茂木は思った。「このまま終わるわけにはいかない」。カウント2-2。日本ハム玉井のカットボールを右翼席へはじき返した。ベンチから飛び出すチームメートを横目に、気持ちよくダイヤモンドを回った。

【め】の前の1勝が手に届きかけていた1点リードの9回。雨脚が強まった。守護神ブセニッツが足元を気にし、制球が定まらない。日本ハム王柏融に同点打を浴びると延長10回には途中出場の村林が2つの悪送球。勝ち越し点を許した。

【の】こりわずかなチャンスでも諦めない。10回。「まだまだいけるぞ!」「打ってやれ!」。ベンチが1つになった。三木監督は「全員が最後まで何とか、というところでそういう力も茂木の背中に乗ったのかな」とパワーを感じた。

【ち】からの限り戦った前日は、午後11時38分まで首位ソフトバンクに挑んだが敗れた。今季最長タイの4連敗で最大8の貯金が底をついた。試合前、指揮官は主将の茂木へ通りすがりに声をかけた。「栄五郎、今日も一緒に頑張ろうな」。茂木も気持ちは同じだった。「負ければ監督がクローズアップされる。苦労や心配をかけてしまったが、監督も最後まで声を出してくれた。逆転するぞという気持ちは伝わってきたので、何とか結果を出せてよかった」。

【は】ん省を糧にする。昨季も6月終了時は首位ソフトバンクに2ゲーム差だったが、7月以降に失速し3位。指揮官はキャンプから常に「昨日のことは忘れて今日から新しい気持ちで」とミーティングで唱え続けた。茂木も「まだまだ上を目指せる位置。ここで折れたら去年までと何も変わらない」と思いは強い。

【れ】ん敗は止めた。ただ、これで終わりではない。「苦しい状況の時に主将が仕事をすれば、また盛り返せる。明日以降も大事。強い気持ちで臨みたい」。雨のち晴れ。1つのトンネルを抜け、明るい日差しを味方につける。【桑原幹久】