社長の思いを胸に矢野野球を貫く。阪神矢野燿大監督(51)が9日、揚塩球団社長の引責辞任表明を受けて胸中を語った。同社長は18年オフに金本前監督から矢野監督への監督交代を推し進めた人物であり、最大の理解者。チームは首位巨人と13ゲーム差と苦境に立たされるが、最後まで諦めずに戦い抜く。同日は広島から甲子園に移動してのDeNA戦が雨天中止となった。

   ◇   ◇   ◇

雨音を聞きながら矢野監督の表情がゆがんだ。「一緒にね。戦ってきた方なんで、申し訳ない気持ちと、もちろん残念な思いもあるし、複雑な気持ちやけど…。本当に前向いてやっていこうとオレの野球のこともすごく背中を押してくれた」。揚塩社長の引責辞任会見が終了してから数十分後、悔しさをにじませた。

18年10月に最下位に終わったチームの責任を取る形で金本監督が、電撃的に辞任した。球団は後任として2軍監督だった矢野監督に白羽の矢を立てた。要請に動いた中心人物が、1年前に就任した揚塩社長だった。宮崎でフェニックス・リーグを戦う矢野監督の下に駆け付けて会談。2軍監督時代から掲げる「積極的で諦めず、誰かを喜ばせる矢野野球」を後押ししてきた。

矢野監督はこの日に揚塩社長と直接言葉を交わし、「フィールド外のことはフロントのトップである私の責任。監督には責任はございません」と伝えられた。DeNA戦(甲子園)は台風14号の接近による天候不良のため中止。室内練習場の練習前には同社長がナインの前で「順位、ゲーム差にかかわらず、1試合1試合、目の前の試合を勝ちきることにこだわって」とエールを送ったという。

シーズンは残り26試合。首位巨人とは13ゲーム差。優勝の2文字は限りなく遠くかすんでいる。だが、諦めないプレーに夢を重ねる人が数多くいる。矢野監督は「何で恩返しできるかというと俺らの元気な姿見せて、戦う姿見せて、もちろんプロなんで、勝つっていうことも含めてやれることはそういうこと。精いっぱい、社長の思いもしっかりオレらが持って戦うという決意でいる」と誓った。熱い思いを引き継ぎ、最後まで全力で戦う。【桝井聡】