巨人ドラフト4位の伊藤優輔投手(24=三菱パワー)が“戦国武将スタイル”のサインを携え、開幕1軍へ猛アピールする。ドラフト後、サインをどうするか考えていると、元巨人で三菱パワーの先輩、加治前らの「サインを作るときは書道家に頼む」という話を思い出した。真っ先に頭に浮かんだのは、書道家・龍玄氏(40)。母校・小山台(東京)の応援用うちわの題字「旋風」を書いた同校OBだった。面識はなかったが、ツイッターのメッセージで11月中旬に依頼。快諾してもらった。

完成したサインはプロ野球選手初の“花押”となった。花押は、かつては織田信長など戦国武将が使用していた格式高い署名のこと。今回のサインは日本花押協会の協会員でもある龍玄氏が公式に作成した。伊藤優は3パターンの提案を受け、2週間熟考。ひらがなの「いとう」に優の「心」と輔の「甫」で構成される花押に決めた。同協会にも登録済みで「プロ野球選手としてずっと関わっていく。格好よく作ってもらった」と出来栄えにご満悦だ。

夢も託された。小学5年で原因不明のネフローゼ症候群に苦しみ野球を諦めた同氏から「記録ではなく、記憶に残る選手になってほしい」とエールを送られた。伊藤優は高校時代、エースとして小山台を都立校初のセンバツ出場に導き「都立の星」として注目された。最速156キロの直球と多彩な変化球を操る本格派右腕は、春季キャンプ1軍スタートが決定。即戦力として期待される。先輩の思いがこもった格式高いサイン。戦国武将にも負けない、球史に名を残す大投手になってみせる。【小早川宗一郎】

主な選手のサインはこちら>

◆伊藤優輔(いとう・ゆうすけ)1997年(平9)1月14日、東京都生まれ。小山台で3年春のセンバツ出場。中大では1年春からリーグ戦に登板し、通算8勝13敗。三菱パワーを経て20年ドラフト4位で巨人入団。今季推定年俸1000万円。178センチ、82キロ。右投げ右打ち。

◆龍玄(りゅうげん) 1980年(昭55)1月29日生まれ。東京都大田区出身の書道家。本名は曽布川弘州(そぶかわ・ひろくに)。小山台高から明大。09年から書道を始め、14年に書道家として独立。大筆師範。主な作品はバレーボール女子日本代表の横断幕や題字、中根一幸元外務副大臣の花押制作など。

◆花押(かおう) 日本で1000年以上の歴史がある署名の文化で、名前をひとつの文字として図案化したもの。織田信長や伊達政宗、徳川家などあらゆる戦国武将や大名が自筆署名として使用した。明治初期から印鑑が使用されるようになったが、現在も首相や閣僚、自衛隊などは決議の際、花押を使用している。

◆プロ野球選手サイン 名前を崩して作るのが一般的。基本的には自ら考案する。漢字の名前を崩す選手が多いが、ひらがなと交ぜる選手、ローマ字の選手もいる。田中将大をはじめ、日本人選手がメジャーリーガーになるとアルファベットの横文字に変更することもある。サインの横にとっておきの「座右の銘」を添える選手も。1日に多数書くこともあるため、素早く書けるように考えられている。