大学野球に、2年ぶりの春がやって来る。阪神大学野球春季リーグが4月3日、ほっともっとフィールド神戸で幕を開ける。19年秋以来、20回目のリーグ優勝を狙う天理大は初戦で大産大と当たる。勝ち頭として期待がかかるのが、プロ注目の最速145キロ左腕、井奥勘太投手(4年=立正大淞南)。1学年上でドラフト2位で広島入りした森浦大輔投手(22)の穴を埋め、頂点を目指す。

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新たな大黒柱になる。井奥は前エースだった森浦らとともに先発を担い、これまでリーグ通算5勝。「全勝を目標に。チームのエースと言われるようになりたいです」。絶対的存在が抜けた今、自分がなるべきものは1つだけ。172センチ、72キロのやや小ぶりな体に大きな決意を抱く。

最速は145キロで、力強く鋭角なクロスファイアが持ち味。その後ろ盾となるのが、レジェンドお墨付きのカーブだ。レジェンドとは、阪神の62年リーグ優勝に貢献し、球団史上最高の二塁手とされる鎌田実氏(19年死去)。兵庫・桃山台中3年時、同氏が監督を務めた「KBAカマタベースボールアカデミー」に所属。曲がり幅の大きな軌道を特徴とするそれは、すぐに鎌田氏の目に留まった。「井奥の持っているカーブは通用するからそれを武器にしなさい」と太鼓判を押された。

2年前のオフには、当時立大に所属していた田中誠也投手(23=現大阪ガス)と合同練習。30~40メートルと遠い距離感のネットスローでカーブを投げ込み「距離があることで腕が良く振れた」と精度を高めた。同じ左腕の田中は、技巧派として大阪桐蔭高2年夏に全国制覇、東京6大学リーグで通算17勝を誇る。その田中の薫陶を受け、磨き抜いた“お守り”は隠れた武器でもある。

頼れる相方もいる。身長182センチの右腕・牛島樹投手(4年=専大玉名)だ。左右の両輪は、ともにプロ注目。下級生時代から切磋琢磨(せっさたくま)してきて、互いを「戦友」と認め合う。井奥は「日本一を狙えるんじゃないかと思う。引っ張っていきたいです」と高い目標を掲げた。【望月千草】

 

◆井奥勘太(いおく・かんた)1999年(平11)11月30日生まれ、神戸市出身。年長で鵯台(ひよどりだい)ライオンズで野球を始め、下畑台小では花谷少年野球部に所属。桃山台中ではKBAカマタベースボールアカデミーでプレー。立正大淞南で2年秋からベンチ入りし、エース。天理大では1年秋からベンチ入り。昨秋は侍ジャパン大学代表の強化合宿メンバーに関西の投手では唯一選出(合宿は中止)。172センチ、72キロ。左投げ左打ち。

 

◆展望◆ 優勝争いは天理大、関西国際大の2校を軸に進みそうだ。関西国際大は右スリークオーターから最速152キロを誇る、翁田(おうた)大勢投手(4年=西脇工)を中心に2季連続Vを狙う。昨秋は右肘の炎症で登板機会はなかったが、今秋ドラフト上位候補が他校の前に立ちふさがる。天理大は井奥、牛島の2枚看板、昨季リーグ首位打者の友杉篤輝内野手(3年=立正大淞南)ら戦力が充実。大産大は新型コロナウイルスの影響で途中辞退となった昨季の悔しさを晴らしたいところ。昨季は4位に沈んだ大体大、17年秋の1部昇格後、初めて3位と躍進した甲南大が追う。