巨人の内野守備走塁コーチだった木村拓也さん(享年37)がくも膜下出血で亡くなってから、7日で11年が過ぎた。10年4月2日の広島戦(マツダスタジアム)前の練習中に突然倒れ、5日後、甲子園での阪神戦前に訃報が届いた。原辰徳監督(62)は木村さんをトレードで広島から巨人に招き、引退後はコーチを託すなど信頼を寄せていた。命日を勝利で飾れず、9試合連続3得点以下で今季初の2連敗。木村さんが体現していた献身性は、苦境を脱する重要な要素になる。

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忘れられない風景がある。年輪を重ねても変わらず明るく前向きで、愚直に野球と向き合った木村さん。原監督との「世界一のノッカーになろう」との誓いを胸に熱心に指導にあたっていた。11年前、ノックバットを手に倒れ、天国へ旅立った。この日、ジャイアンツ球場近くの坂道に埋め込まれている木村さんの手形の脇には、花が供えられていた。原監督は「11年たちますか。早いね、時がたつのは。あいつのは良い思い出しかないんだよね。ベテラン選手であっても初々しくてね」と目を細めた。

忘れられない思いがある。09年9月4日ヤクルト戦。試合中に捕手が不在となる緊急事態に、木村さんがマスクをかぶった。指示を受ける前にブルペンへと向かい、捕球練習で備えていた。チームのために-。木村さんの献身性は、その後の巨人が強さを取り戻す礎となった。「すごく残っていますね。ジャイアンツに」。春季キャンプでは石川が緊急事態に備えて捕手練習に励んだ。「その前は寺内だったり、そういう『拓也さんがやったやつですよね』っていうね。やっぱり残してくれていますよ」。

忘れてはいけない姿勢がある。新型コロナの影響で主力4選手が離脱。この日は3回に失策絡みで先制を許し、打線もつながりを欠いた。木村さんが体現してきた自己犠牲や愚直さは、苦境にもがく現状を打ち破るすべになる。試合後、原監督は「野球が大好きな人だったからね。しっかり野球を見続けてくれてるでしょうね」と語った。全員でカバーしながら、献身性でピンチを救える選手が出てこられるか。木村さんの姿と信念が継承されなければ、常勝にはたどり着けない。【浜本卓也】

 

○…巨人の中島、丸、若林、ウィーラーは、4日に新型コロナウイルス陽性と判定された。球団は接触頻度が高かったとして亀井、増田大、北村の3選手を隔離し、4日に「特例2021」に基づいて登録を抹消。6日に再登録されたが、陽性判定を受けた主力4選手の復帰時期は未定だ。

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