日刊スポーツ東北版で、毎週木曜に楽天情報をお届けする「週刊イーグルス」。第7回は18日からのオリックス3連戦で開催される「がんばろう東北シリーズ」を前に、「楽天イーグルス南三陸町応援協議会」を特集します。【取材・構成=相沢孔志】

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13年11月3日。仙台市の本拠地楽天生命パークから北東へ約100キロの沿岸部に位置する南三陸町が、歓喜にわいた。楽天が巨人との日本シリーズ第7戦を制し、初の日本一に立った。当時仮設の「さんさん商店街」ではパブリックビューイングが行われ、100人を超える地域住民が一投一打に沸いた。町内で薬局を営む同協議会の小坂克己会長(64)は「それまでは常に5位や6位だったから、みんな優勝が信じられなくて…。こんなにすごいことなんだという気持ちでしたね」と言葉に熱をこめた。

同協議会は球団創設5年目の09年に発足。球団、町役場と連携を取り、町内で開催される2軍戦前日の監督、選手との交流会企画や1軍戦バスツアーの窓口などを担っている。オフには選手らが各地を訪問するシーズン報告会の運営にも携わる。2軍戦は年に1度の町の大イベントだが、ここ2年はコロナ禍の影響で中止。同会長は「(オフに)優勝報告会があれば、準備を整えてお迎えしたい」と願う。

今から10年前。東日本大震災に見舞われた同町は、死者と行方不明者を合わせて約830人と大きな被害を受けた。同会長は00年に開業した薬局で被災し、店舗は津波で消え去った。数日後、避難した近所の体育館へ、球団からサンダルやTシャツなどの支援物資が入った段ボールがトラックで送られた。「箱の外には選手たちから『頑張ってね』と書いてあった。球団職員が握ったおにぎりも並べられていました」と感謝の記憶は鮮明に残っている。

翌14年の2軍戦後には、「さんさん商店街」を訪れた当時2軍監督の大久保博元氏(54)が涙を流しながら言葉をかけてくれた。「震災があったときは私も心配で、居ても立ってもいられなかった。なかなか連絡がつかなくて、おふくろ生きていてくれよと思っていた。みなさんも大変でしょうけど、頑張ってください」。同会長は「普通なら、来場の御礼で終わる。だけど大久保さんは切々と当時のことを思い出しながら、我々が被災者というのを考えてしゃべってくれているのが伝わってきた。それが印象的で忘れられない」としみじみ話す。イーグルスを通じたさまざまな出会いが、心の寄りどころを生み出してくれた。

コロナ禍に見舞われた昨年は同商店街でファン感謝祭のパブリックビューイングを実施。今年は「どこかのタイミングでパブリックビューイングをやろうという話はある。試合もありきです」と構想をふくらませる。「感染予防対策を進めて、秋にはできれば昔と同じような応援スタイルで、みんなと優勝の喜びを分かち合いたいですね」。8年前の喜びをもう1度。東北の名を背負うイヌワシ軍団を、陰ながら支え続ける。