西武が誇る剛腕が、日本記録に到達した。最速160キロ右腕・平良海馬投手(21)が、9回のマウンドを2三振含む3者凡退の無失点に抑え、10セーブ目をマークした。これで38試合連続無失点とし、06年藤川(阪神)の日本記録に並んだ。開幕から0を刻み続け、いまだ防御率0・00と無双状態。次回登板はプロ野球未踏の領域への挑戦となる。チームは勝率5割で3チームが同率3位で並び、5チームがAクラスという珍事となった。

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もはや隙が見当たらない。平良は大記録がかかったマウンドでも、無双だった。先頭の代打・真砂を156キロの直球で空振り三振。三森を投ゴロに仕留め、最後は牧原大を空振り三振に打ち取った。「危なかったー」とつぶやく真ん中甘めのカットボールにかすりもさせなかった。19球で仕上げた9回。日本記録に並んでも感情に抑揚はない。お立ち台では「1歩1歩の積み重ねでここまでこれたのでうれしいです」。淡々と言った。

ウイニングボールにも興味を示さず「えーどうしますかね? 考えます」。快挙をたたえ、記録が映し出された京セラドーム大阪の大型ビジョンを背に、無数のフラッシュを浴びても、表情はくずさない。「すごい大きい喜びではないですけど、うれしいなあって感じです」。34試合目にパ・リーグ記録に並んだ20日ロッテ戦で8回2死一、二塁から登板。連続四球で失点も、記録上失点はつかずに継続した。「もうそんな…、なんも…、そうっすね…。ちょっと不思議な記録だなあと思いながら」と、周囲をよそに肩の力を抜く。

マウンドで隙はないが、弱点はある。アルコールが苦手で、20歳になってもお酒は飲めない。「まったくダメ。注射のとき、消毒のアルコールを塗られるだけで赤くはれるんです。まったく飲めません。飲む気もありません」。19年リーグ2連覇のビールかけでは未成年だったため、離れた場所から見届けた。今季、同率3位から逆転優勝を果たしても、侍ジャパンの一員として東京五輪でシャンパンファイトがあっても、歓喜の輪から離れて見守ることになりそうだ。

次はプロ野球前人未到の新記録への挑戦が待ち受ける。だが「今日(点を)取られるかなあって思いながらいつも投げてます」。その言葉とは裏腹に、無敵の平良伝説はまだまだ続く。【栗田成芳】

◆平良海馬(たいら・かいま)1999年(平11)11月15日、沖縄県石垣市生まれ。八重山商工では1年春からベンチ入り。2年秋からエースも甲子園出場なし。17年ドラフト4位で西武入団。2年目の19年に1軍デビューし、同年8月30日ソフトバンク戦でプロ初勝利。20年は54試合に投げ1勝0敗1セーブ、33ホールド、防御率1・87で新人王。最速160キロ。173センチ、100キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸4200万円。

西武松本(中5日の登板で6回5安打1失点と好投し7勝目)「何とか最少失点で粘ることができました。今日は調子うんぬんというより、気持ちの部分でしぶとく粘ることができた」

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