ロッテ小島和哉投手(25)が男を上げた。ちょうど100球で楽天打線を3安打完封。自身初の2ケタ勝利で、チームの10勝一番乗り。初回の2得点を守り、味方の失策も力投でカバー。優勝マジック点灯寸前から4連敗と苦しんだチームを救った。「天の上の人」という楽天田中将大投手(32)と投げ合っての価値ある1勝。浦和学院(埼玉)-早大と歩んだ左腕が、プロの投手として独り立ちし悲願の優勝へチームをけん引する。

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エースの活躍をした小島には完封より10勝より、うれしかったことがある。

「僕自身、シーズン前半あまりチームに貢献できなかった気持ちが強くて。いつも打って勝ちをつけてもらった。お互い助け合いの気持ちじゃないですけど、エラーした時は僕が投げて絶対助けるんだという気持ちで抑えられたので」

無安打投球の5回、一塁レアードが連続失策でピンチを作った。前回登板では中村奨の失策を機に2失点。この日は無失点で切り抜け、自分の弱さを乗り越えた。ベンチに戻りながら、併殺を取った二遊間をねぎらおうと上半身だけひねって歩いた。4連敗を喫し、益田と中村奨を中心に選手ミーティングを開き、意思統一した翌日の大仕事になった。

田中将とのタフな投げ合いは、9回の攻防まで続いた。「天の上の人のような」と表現する。「偉大な人と投げ合えることが、僕の野球人生の中でもすごい幸せだなと思って、今日は投げられたと思います」。苦しみながらも首脳陣の信頼を勝ち得てきたからこそ、託されたこの舞台。左打者の内角にも直球を強気に差し込み続ける姿に、井口監督も「ほんっとによく投げてくれた」とたたえた。本当に、ではなく「ほんっとに」と余韻を込めた。

中学時代には緊張感ある投手戦を制した直後、バッテリーで思わず涙したこともある。10年を経て、感謝が何より先に出る青年になった。チームの貯金は11で、うち7つを小島が稼いだ。「優勝できなかったらその貯金も意味ないと、自分の中では思っているので」と慢心や油断とは無縁。「早稲田の魂を引き継いで頑張りたいです」と引退する日本ハム斎藤の姿からも力を得た。野球人生、もうすぐ20年。ロッテのために、全ての学びを力に変える時が来た。【金子真仁】