阪神はドラフト1位で高校BIG3の1人、高知・森木大智投手(18)を指名しました。日刊スポーツでは森木投手がプロ野球選手になるまでの軌跡を「森木がゆく」と題し、全10回連載でお届けします。第5回は、足腰を鍛えた「森木ロード」。【取材・構成=中野椋】

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重いペダルを気張ってこぐ、とにかくこぐ。最速154キロを生み出す森木の下半身は、知らず知らずのうちに、育まれていった。高知市の高知高から野球部グラウンドまでは約3・6キロある。山に囲まれ高台に位置するグラウンドまで、アップダウンの激しい山道を約20分かけ、自転車で移動する。

「ママチャリ」と言われる普通の自転車では厳しい道のりだ。部員はクロスバイクやロードバイクで上っていく。森木も同様でGIANT製のシルバーのクロスバイクを愛用。それも3年間で1度、買い替えており「森木自転車2代目です」と笑う。

高知高を出発し、お隣の高知商を横目に山道を進むと、坂本龍馬が泳いだといわれる鏡川が左手に見えてくる。さらに山道の方へ右折。グラウンドが見えた…と思いきや、待ち受けるのは強烈な坂道だ。心が折れそうになるほどの「最後のとりで」で森木は、ある信念を3年間貫いてきた。

森木 最後の坂が一番きついので、そこで自転車を降りる人がいるんですけど、自分の中では「絶対降りずに頑張ってこいでいこう」と思って、1回も降りなかったですね。

雨の日はレインコートを羽織り、「年に2回くらい降る」という雪の日も安全に配慮しながら“山の神”と化した。夏は汗だく、冬はウオーミングアップが不要なほど体が温まった状態で到着する。「グラウンドに上がってきただけでバテています」と笑って言うのは本音だろう。

森木の自転車旅はどこまでも続く。学校から約10キロ離れた春野球場で紅白戦が行われる時も、当然自転車移動。自転車で1時間30分はかかる山道を「僕らは飛ばすんで、1時間弱くらいで行ってましたね!」と平気で走り切ってきた。

そんな「森木ロード」でのトレーニングに加え、土佐市の自宅に帰ると、雄大な自然の中を駆け抜けた。コロナ禍で練習が制限されている期間、近所をとにかく走っていたから目撃情報が相次いだ。小学校時代に指導した高岡第二イーグルスの石元監督は「とにかく走っていましたね。よく見かけました」と目を細める。こいで走ってまたこいで。森木の足腰はどんどん強くなっていった。(つづく)