阪神はドラフト1位で高校BIG3の1人、高知・森木大智投手(18)を指名しました。日刊スポーツでは森木投手がプロ野球選手になるまでの軌跡を「森木がゆく」と題し、全10回連載でお届けします。最終回では、プロ入り目前の森木が本音を語った。【取材・構成=中野椋】

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軟式球で150キロを記録した「スーパー中学生」は、阪神にドラフト1位指名され、夢の扉を開いた。その道のりの中、「森木は早熟じゃないか」「伸びしろはあるのか」という声をネットなどで、いやでも目にすることがあったという。

森木 逆に言えば僕には伸びしろしかない。そういうふうに言っている人は「見とけよ」とずっと思いながらやってきて、そういう言葉が自分の原動力になっている時もありました。

これが森木の本音だ。エリート街道を歩んできた右腕にも、反骨心があった。6年間指導してきた浜口佳久監督(46)も「早熟っていう言葉が、あの子には絶対当てはまらないですよ」と断言し、「そんな浅はかな言葉じゃなくて、極めていくということです。身長だけでいえば、できあがっています。あとはスキル、筋力的なことで伸びていけばいい」と願う。注目や逆風を力に変えることができるのは、プロ向きの性格といえるのかもしれない。

プロに入って迷わないように、さらに成長し続けるために。森木と浜口監督は情報を取捨選択する“特訓”を重ねてきた。フォームの参考にする動画のどこを見るか。連続写真20枚のうち、自らと比較するべき1枚はどれなのか。森木は疑問があれば浜口監督に連絡を取り、二人三脚で考え抜いてきた。

浜口監督 プロではいろんな人が森木に携わる。自分を見失わないために、今がベース。「原点回帰」を持っている人間と持っていない人間では違う。考え方も動作も、ダメな時はここの原点に戻ればいい。

恩師の教えを身に染みこませ、プロの世界へ羽ばたく森木には夢がある。「高知の野球人口を増やしたいんです」。地元高岡の少年野球チームはここ数年で半分になったという。かつて、自らが藤川球児氏の「火の玉ストレート」に憧れたように、次は森木が子どもたちに夢を与える番だ。

森木 この6年間は波瀾(はらん)万丈な野球人生でした。良いことも悪いことも、自分自身成長するために必要な時間。これからは「日本で一番の投手になる」ということを頭に置いて取り組んで行きたい。

真っすぐな目で言い切る18歳が、厳しいプロの世界で道を切り開いていく。(おわり)