DeNAの石井琢朗新コーチ(51)が15日、横須賀市の球団施設で始動した。午前に2時間30分ほどの、指導を終えると取材に対応し「浦島太郎状態です。僕の頭同様、追浜球場も横須賀も久々で施設が全部新しくなって。竜宮城に行って、帰ってきた感じ」と感想を口にした。

午前中、内野守備練習をじっと観察していた。最初はノッカーにボールを渡していたが、自然と体が動いた。自らと同じ、俊足遊撃手の森敬斗内野手(19)をさっそく指導。「外から見ていい選手だなと思っていた。期待されているなと。ひと言二言、ここで話せないことを話した」と目尻を下げた。走塁や守備も含めた、総合的な指導が期待されている。

古巣のユニホーム姿を見せるのは、広島に移籍した08以来13年ぶりとなった。「着ている自分が見えない。どうですか」と語ったが、いろいろな思いがこみ上げた。「出て行く時にいろんな思いはありましたけど、外に出て、いろんなものを勉強して『井の中のかわず』だと感じた。大海原を漂流して、井の中に帰ってきた。自分で出て行ったので『ただいま』よりも新天地に来た感じ。名前もDeNAになって、新鮮な新しい気持ちでやっている」と話した。

恩返しの気持ちを持っている。「ここが年齢的に最後になるかなと。出て行った時、やり残したことがあった。やり直せる機会を与えてもらった。ここにいる時は、どちらかというと、自分の成績も声援も年俸も与えられるまま出て行ってしまった。(今回は)逆にいいものを与えられればと思う」。複雑な思いを抱いて退団したのは事実だが、あらためて古巣への愛情がわいている。

三浦大輔監督、鈴木尚典コーチ、斎藤隆コーチら、98年の優勝メンバーが再集結した。「今の時代は新しい物を取り入れて、便利になっている。ここの施設も、インターネットのYouTubeも。やっぱり古き良き時代のものもある。僕はそのために戻って来たのかなと。うまく融合して、チームとしての色を出せれば」。使命感をにじませた。

広島、ヤクルト、巨人。外部で経験を積んだ指導者が、また1人帰ってきた。「ここ数年、なんで優勝できないんだろうな(と感じていた)。優勝してもおかしくない戦力を持っている。対戦していて脅威でした。打線も投手も。これから課題等を監督、コーチと話して、いいものを出せるように手助けしたい」。目指すは24年ぶりの優勝だ。そのために帰ってきた。【斎藤直樹】