西武がゲーム差0・5で迎えた“2位攻防戦”を制した。ヒーローは、2日に支配下登録されたばかりの20歳、長谷川信哉内野手だった。3-3の8回に決勝の右前適時打を決め、5回にはプロ初安打&初盗塁もマークした。チームに勢いをもたらしそうな新戦力が躍動し、貯金は今季最多5。3月30日以来の2位に浮上した。

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勢いに乗ってきそうなチームには、得てして新しい力の台頭があるもの。西武を2位浮上に導いたのは、支配下登録からたった1週間、スタメン3試合目の20歳、長谷川だった。

終盤までもつれた“2位攻防戦”。3-3の8回1死一、二塁の勝ち越し機で、打席に向かった。楽天鈴木翔の2球目。外角高めの148キロ直球を芯で捉えた。打球は二塁手の頭上を越えてライト前で弾み、二走・熊代がホームに滑り込んだ。アウト判定に、ベンチはリクエストを要求。緊張の数分間も、長谷川は一塁ベース上で自信を持ってジャッジを待った。結果は覆ってセーフ。欲しかった勝ち越し点をもたらした若獅子は「バッティングで勝利に貢献できてよかった」と初々しく笑った。

憧れの選手は「山田哲人」で、将来の夢は「トリプルスリー」。育成の時から、変わらず大きな目標を口にしてきた。そして同じ育成出身の高卒ルーキー滝沢の活躍が大きな刺激になった。「滝沢選手には先を越されましたけど、いいライバル。レベルアップしていきたい」。足元を見つめながら、この日の発揮した勝負強さには、大化けの可能性も漂う。

試合前まで9打数0安打。2日に支配下登録され、即1軍登録も結果を出せずにいた。8回の打席。ベンチには森も中村も残っていた。それでも辻監督は、代打の選択肢は「1ミリも考えていなかった」と言った。5回に11打席目でプロ初安打を放ち、初盗塁も決めた男の勢いに託し、最高の結果となった。

辻監督は今季、「競争意識」と繰り返す。森も中村も休養でスタメンを外れていた。打線の迫力のなさは否めない中、若い力の躍動で大事な1戦を取った。じわりと2位に浮上し、首位も視野に入ってきた。「そら、優勝目指してますから」と指揮官。勢いが生まれそうな1勝。真夏の反攻の予感が、漂ってきた。【上田悠太】

◆長谷川信哉(はせがわ・しんや)

▼生まれ 2002年(平14)5月17日、京都市出身

▼サイズ 183センチ、80キロ

▼投打 右投げ右打ち

▼球歴 4歳時に兄善輝さん(25)の影響により一橋ガッツボーイズで始まる。中学時代は京都嵐山ボーイズに所属。敦賀気比(福井)に進学し、2年夏に甲子園に出場

▼ドラフト 20年に育成2位指名

▼登録は内野手 1軍でのスタメンは3試合「中堅」だが、内野手登録。二塁、三塁、遊撃も守れるユーティリティー性を備える

▼推定年俸 460万円

▼座右の銘 百折不撓

▼趣味 音楽鑑賞。「流行を聴き、時代に遅れないように。(最近は)Back numberの『水平線』をよく聞きます」

▼好きな食べ物 ハンバーグ。「一番はお母さんが作るハンバーグです」

 

◆西武の外野手事情 規定打席到達はオグレディのみ。残り2枠は好調の選手を起用し、固定できていない。広島に加入した秋山の獲得も目指したが、合意に至らなかった。愛斗は守備は高評価ながら、打撃の安定度がいまひとつ。川越が好調を維持しているが、シーズンを通した活躍は不透明だ。右膝手術から復帰し、5月末に1軍昇格した若林は状態が上がらず、6月27日に登録抹消。西川も20打席無安打で降格となった。現在は5年目の高木、長谷川らにチャンスが与えられている。

【ニッカン式スコア】9日の楽天-西武戦詳細スコア