ぬかるんだ足場で、体勢を立て直した。この日に再昇格したばかりのオリックス西村凌外野手(26)が、1点を追う9回2死一、二塁から起死回生の逆転2点二塁打を放ち、左拳を突き上げた。

今季初安打が殊勲打となり「僕には余裕がない。1日、その打席が全て」と熱い気持ちを吐露した。勝負の打席に向かう直前、ともに大阪・舞洲で鍛錬を積んだ小谷野野手総合兼打撃コーチに呼び止められた。

「思い切ってやってこいよ!」

「小細工なしで、自分のやってきたことを出せばいいからね!」

グッと背中を押された西村は「栄一さん(小谷野コーチ)に本当に救われた。気持ちが楽に入れた」と感謝。雨中の一打で心を晴らした。

今季初のお立ち台。今季2軍では39試合に出場し、打率3割2厘、2本塁打、11打点を記録しているが「毎試合出ることはなかった。悔しい思いもたくさん。毎日が自分にとって大切な日々です」と涙はこらえ、昇格に備えた。水本監督代行は「本当によかった。ファームから『西村』と推薦があった」とたたえた。中嶋監督が新型コロナ陽性判定を受け、離脱。この日は最後の最後まで西村を信じ、起用を的中させ中嶋監督ばりの“水本マジック”をさく裂させた。

逆転勝利で貯金を今季最多の5に戻した。首位西武とは依然2・5ゲーム差。指揮官、ラオウ杉本らが不在でも「全員で勝つ!」。その合言葉が似合うチームだ。【真柴健】

◆西村凌(にしむら・りょう)1996年(平8)2月21日生まれ、滋賀県出身。青森山田-SUBARUを経て17年ドラフト5位でオリックス入団。18年に1軍デビューしたプロ5年目の外野手。通算97試合に出場、255打数50安打、5本塁打、19打点、打率1割9分6厘。178センチ、84キロ。右投げ右打ち。

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