「やればできる!」の精神を取り戻した。楽天安楽智大投手(25)が同点の延長10回1死満塁でマウンドに上がり、打者1人を併殺打に仕留めてピンチを断ち、今季6勝目を挙げた。

試合前時点では防御率4.39と不調。セットアッパーの役割を期待されながら、ファーム調整を経験。悔しい時間が続き、自信を失いかけた時期もあった。強い気持ちを取り戻し、チームのサヨナラ勝ちに貢献。気持ちを新たに、シーズン最終盤戦へ挑む。

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安楽は動じなかった。同点の延長10回1死満塁でマウンドに上がった。相手は、打率1位の代打松本剛。絶体絶命のピンチだった。カウント2-1から内角に直球を投げ込んだ。「デッドボールでも押し出しですけど、インサイド真っすぐでいくしかないんだという、強い気持ちを持っていけた」と気迫で押した。三塁併殺打に打ち取り、マウンド上でほえ、跳びはねた。

今季は不振に陥り、強気の投球が影を潜めた。「弱かった自分がいた」と振り返る。強い気持ちを育ててくれたのは、済美(愛媛)で過ごした3年間だった。恩師・上甲正典元監督は、春夏通じて17回甲子園に出場し、センバツで2度優勝経験のある四国の名将。安楽が3年夏の愛媛大会3回戦で敗れた試合が、最後の指揮だった。安楽のプロ入りを見届けることなく、死去した。

前日2日は恩師の命日だった。「『強い気持ちを持ってやりなさい』とか『練習はうそをつかない』とか、そういうことを言われて今も励んでいる。状態が上がらない中でも、なんとか上げてやると必死にもがいてやってるのは、上甲監督の教えが一番生きているかなと思います」と感謝。教えを守り、プロで活躍している姿を天国へ見せている。

「やればできる」は済美の校訓。その下で、たゆまぬ努力を貫いてきたから、打者と真っ向からぶつかることができる。「強い気持ちだけは誰にも負けない。それだけのことをやってきたという自信はある」と胸を張った。

取り戻した自信。それを胸に、全力で腕を振ってチームに貢献する。「上甲監督がもし生きてたら、『何やってるんだ』って言われるようなここ数カ月の成績。それだけじゃないですけど、やってやるぞって気持ちはあります」。目の色を変え、闘志をメラメラと燃やしている。【湯本勝大】

○…田中将が5回2/3を4失点も勝敗はつかなかった。5回まで1安打無失点も、3点リードの6回に崩れた。無死一塁でアルカンタラに2ラン、2死一、三塁で近藤に左前適時打を浴び、同点とされて降板した。2番手宮森が左前適時打を許し、この回4失点で一時逆転を許した。「チームが勢いづいている中で、僕が相手に流れをやってしまって、逆転までされてしまった。一番やってはいけないことをやってしまった」と悔しさをにじませた。

▽楽天山崎(5回無死走者なしで右翼へ2号ソロ)「試合に出たらしっかり仕事をして、チームに貢献する。それだけです」

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