阪神岡田彰布監督(64)は、どんな野球でチームを勝たせるのか。「第2次岡田阪神への期待」と題し、新監督をよく知るタイガースOBの日刊スポーツ評論家陣が、人柄や思い出も交えてエールを送ります。第1回は現役時代の85年に一緒に日本一に輝き、05年は投手コーチとして第1次岡田阪神のリーグ優勝に尽力した中西清起氏(60)です。【聞き手=松井清員】

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岡田監督のもとで04年から5年間、投手コーチをやらせてもらったけど、一言でいえば「厳しさと勝負強さを持った監督」の印象が強い。ベンチでニコニコすることはないし、選手が本塁打を打っても先の先の先の展開を読むから、メダルを掛けることもないだろう。試合中はもちろん、試合前練習からチームにピリっとした空気が漂うはずだ。

勝負勘が鋭く、セオリー無視の思い切った采配もあったが、芯は通っていてブレがなかった。16日の就任会見で佐藤輝と大山を中軸に置いて守備位置も固定すると話していたように、中心だと見込んだ選手はとことん使う。04年の監督1年目に新人の鳥谷を遊撃で辛抱強く使い続けたようにね。ここはさすがに代打だろうと思っても、「10年チームを背負っていく選手やないか!」と怒られた。金本や今岡、桧山、赤星らの主力は守備位置も不動。コロコロ変わってエラーすると、選手は言い訳ができる。逃げ道のない環境を作り、責任感を養わせていた。

投手陣は「投げなきゃ銭にならん」と、どんどん投げさせるタイプ。特に先発の見極めは早かった。その分、中継ぎが登板過多気味になることもあったので、ブルペンでいかに無駄な球を投げさせないかを徹底し、4~5球で行かせたこともあった。前回と時代は違うが、投手起用でも攻めの采配は変わらないと思う。

とにかく負けず嫌い。「9点取られたら10点取れや」「点が取れんかったら0点に抑えろや」とよく言っていた。「野球は1点でも多く取ったら勝ちのゲームやろ? その積み重ねで優勝するんちゃうん?」とも。腹の中は違ったかも知れないけど、大差でも捨てゲームは一切感じなかった。

だから負けると近寄れないほど悔しがる。それでいて繊細で、08年に巨人に13ゲーム差をひっくり返された終盤は食事がノドを通らず、げっそりやつれていた。電撃辞任は潔すぎる責任の取り方だった。今回はあの時の悔しさを胸に秘めて、どうやって勝つかに執念を燃やして戦うはずだ。

信念は「守りの野球」なので、まずセンターラインから固めにいくだろう。守備力を重視し、捕手、二遊間、中堅に誰を起用するかは注目ポイントだ。11月の秋季キャンプを見て、2軍からの抜てきもあるだろう。「少し直したら面白いやん」と見初めたら引き上げるはず。1発長打が期待できる井上や前川は、岡田監督が好きそうなタイプだ。

怒る時は選手ではなくコーチを怒っていた。「なぜこうなる」「なぜこんな失敗をさせるんだ」と。もちろん選手も同じ失敗を繰り返したらダメだけど、できるだけ伸び伸びプレーさせたい考えがある。だからコーチ陣は、岡田野球を十分理解しておく必要がある。今回のスタッフは若く、次代の指導者育成の意味合いも強い。野球を深く学ぶ上で良い勉強になるはずだ。

優勝できる戦力はある。特に投手陣がいいから、攻撃力アップに集中できる。あとは孫ほど年の離れた選手たちとどうコミュニケーションを取っていくか。優勝を知らない世代にどう勝負強さを植えつけ、選手たちも岡田野球を理解して昇華していくか。大阪生まれの生粋のファンで、タイガースへの愛情は人一倍。再建の切り札、トリデであることは間違いないし、面白くなることも間違いない。

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