芯を外した鈍い音とともに、内野ゴロの山を築いた。ヤクルト先発の山下輝投手(23)は、先頭佐野皓を初球で三ゴロに仕留めると、一呼吸ついた。ドラフト1位とはいえ、ルーキーにして日本一をかけた大舞台で大抜てき。5回3失点の内容で終え「初めての日本シリーズですごく緊張しました。とにかく1人1人攻めていこうという気持ちで一生懸命投げました」。チームは9回に逆転負けを喫したが、新人らしからぬ老練の投球術を披露した。

スライダーの軌道とは対になるワンシームに磨きを掛けてきた。この試合、直球は140キロ台前半も、3者凡退に抑えた3回までに内野ゴロは8個。2点リードの4回に同点を許し、5回には吉田正に一時勝ち越しの本塁打を打たれた。それでも身長188センチの長身から打たせてとる投球を見せた。

1年前、テレビで見ていた頂上決戦で、まさか自分が投げるとは夢にも思わなかった。ドラフト指名直後、法大の寮でテレビ観戦していた。「いずれは、と思っていたんですけど、1年目でまさかくるとは」。左尺骨の疲労骨折で出遅れたルーキーイヤー。同じ左腕で小さな大投手こと42歳石川から、キャッチボールの重要性を教わり実践。9月にはデビュー2戦目で初勝利を手にした。

神宮での第2戦を延長引き分けで終え、第5戦での先発が正式に決まった。高まる緊張感。翌日の投手練習に参加すると、石川に声を掛けられた。「こんな経験、1年目からできないぞ。楽しく思いっきりやるだけ」。石川の日本シリーズ初登板はプロ14年目、初勝利は20年目となる昨年だった。大先輩に背中を押され「ぶっつけ本番でもいいのかなと思います」と腹をくくった。マウンドではピンチでも深呼吸してポーカーフェース。「大きな石川」が存在感を示した。【栗田成芳】

○…セットアッパーの清水が、今季レギュラーシーズンを含めて初のイニングまたぎで、2回をパーフェクトに抑えた。1点リードの7回から登板し、力強い直球とフォークを軸にオリックス打線を翻弄(ほんろう)。サヨナラ負けを喫するも、今シリーズ早くも4試合目の登板で抜群の安定感を見せた。高津監督は回またぎ起用に「あまり先を考えていないので、今できる最善策をとったつもりです」と話した。

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