09年WBC戦士で阪神OBの岩田稔氏(39=日刊スポーツ評論家)が10日、3月のWBCに出場する侍ジャパンメンバーの湯浅京己投手(23)を直撃し、この日見いだした新スタイルを聞き出した。前日9日のシート打撃登板ではWBC球でフォークが浮く場面も目立ったが、翌日のブルペンでは握りを微修正して好感触。先輩は後輩の適応力に納得した上で、大会に向けて負傷リスクの回避も願った。【聞き手=佐井陽介】

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湯浅投手に聞いたところ、前日9日のシート打撃ではまだWBC球にしっくりこない中、指にバチッとかかったボールも何球かあったそうです。たとえば島田選手から見逃しストライクを奪った外角直球には「あっこれだ」という感覚があったとか。今はそういうボールを増やしていく段階なのだと思います。

自分も09年WBCの準備期間に経験しましたが、WBC球は日本のボールよりも大きくて滑ります。縫い目の幅もバラバラで1球1球ボールの動きが変わったりもしますし、短期間での適応が非常に難しいボールでもあります。湯浅投手の場合はシート打撃でフォークが浮く場面が目立っていました。これも抜けやすいWBC球ならではの現象ですが、この日のブルペンでは早速微修正を図り、好感触を得たそうです。簡単に表現すれば、シート打撃の時より握りを少し浅めにしたことで「抜け」が収まったというイメージです。

取材した話を総合すると、こんな感じです。湯浅投手のフォークは日本球の場合、開いた人さし指と中指の両方を縫い目にかけていた。でも、ボールがやや大きいWBC球になると、日本球と同じ指の開きのままだと両方の指を縫い目にかけられなくなる。そこで通常より指の開きを大きく深くした結果、フォークが浮いてしまっていた。

それをこの日はWBC球でも日本球と同じ指の開きに戻した。すると両方の指を縫い目にかけることはできなくなったけれど、一気に感触が良くなったそうです。結果的にはボールに対する握りが日本球より浅くなるので、もしかしたら球速が少しアップするかもしれません。いずれにしても、大きな武器のフォークをWBCでも操れる球種に戻せそうでひと安心です。

一方で、湯浅投手には気をつけて欲しいポイントもあります。WBC球は抜けやすいため、どうしても通常より強くグリップして抑え込もうとしてしまいがちです。そうなると二頭筋や前腕に張りが出やすくなってしまいます。負傷を回避するためにも、リリースの瞬間だけグリップする感覚を1日も早くつかんでほしいと思います。(日刊スポーツ評論家)

◆岩田の09年 3月のWBC日本代表に、追加招集の形で加わった。ドジャース黒田が参加を辞退したため。ところが第2ラウンド韓国戦に登板後、左肩に違和感を覚えた。帰国後の診断は「左肩肩峰下滑液包炎(けんぽうかかつえきほうえん)」。1軍戦初登板は6月10日西武戦までずれ込んだ。シーズン通算16試合に登板し7勝5敗、防御率2・68。後半戦は能見とローテーションの両輪を務めたものの、オフの契約更改では200万減の3800万円(金額は推定)という厳しい評価となった。

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