阪神3年目の石井大智投手(25)が、今季最多4万2580人のファンの視線を集めた。初のヒーローインタビューで「(マウンドより)今の方が緊張します」と照れ笑いした。1点リードの8回に登板し、3者凡退無失点で3ホールド目。開幕前の実戦10試合に加え、シーズンも4試合連続無失点と無傷の男だ。零封リレーを演出し「声援のおかげでいいピッチングができた」と感謝。岡田監督も「マウンドの姿もたいぶ様になってきた」と目を細めた。

2年前は未熟だった。プロ1年目の21年開幕戦。7回に登板するも失点し、先発藤浪の勝ち星を消してしまった。「晋太郎さんの人生を変えてしまったかもしれない…」。頭を抱えたが「俺も中継ぎを経験して、気持ちは分かるから」と先輩になぐさめられた。

1年前は焦りがあった。6月3日の日本ハム戦。ブルペンで準備していたが、チームは最大6点差を大逆転。出番がなかった。「今日も投げられない…」。思わず態度に出してしまい「気持ちは分かるけど、勝っている時は態度に出さないように。1人になってからいくらでも考えたらいい」と岩崎に指摘された。

2人の言葉は忘れない。重要な局面を任されるようになった現状を「自分としても目指していたところですけど…」と話した後、言葉に力を込めた。「でも(阪神の)中継ぎは全員いい投手。助け合いながら、誰かが悪い時にカバーできるのが強みだと思う。自分が悪い時もあると思うので」。打たれる悔しさ、投げられない苦悩。痛みを人一倍知っているからこそ、そう言える。ワンチームのブルペンの先頭を今、石井が走っている。【中野椋】