オリックス山本由伸投手(24)は悔しさとともに、どこかすがすがしくもあった。「すごく締まった試合でしたし、今回負けましたけど、また対戦できる時があれば、すごく楽しみだなと思います」。6回9奪三振5安打1失点で初黒星。軍配は佐々木朗に上がったが、すぐに“リベンジ”の機会を心待ちにした。
先にマウンドに立ったライバルは、初回を3者連続三振でスタート。湧き起こるロッテファンの大歓声の中、脇目も振らずマウンドへ向かった。初回、2回と二塁打を浴びるも、後続を断って無失点。佐々木朗が三振の山を築く一方で、山本はまさにエースの投球。要所をきっちり締めた。
4回2死一、三塁、茶谷の打球が三塁手宗のグラブをはじき、この適時打が決勝点となった。この日はアンラッキーな当たりも多かったが、言い訳はない。「ちょっと運の悪い打球も何個かありましたけど、それは特に何もないです」ときっぱり。「もうちょっとテンポのいいピッチングができたかもしれない」。自らに原因を求めた。
日本中の野球ファンが注目した2人の主役。ともに出場した昨夏オールスターでは、佐々木朗の印象についてこう語っていた。「なんか主役のような雰囲気が出ていた。そこも負けてるなと。雰囲気がめっちゃすごいです」。3歳下の右腕とはオフに練習をともにした経験もあり、今年はWBCでチームメートとして共闘。互いの良さを認め合うからこそ、心からたたえることができる。
中嶋監督も佐々木朗について「良かったでしょうね」と認め、山本の投球には納得の様子だった。2人の対決は続くはず。次戦の主役はきっと、オリックスのエースだ。【磯綾乃】
★主な大エースの投げ合い
◆稲尾(西鉄)対杉浦(南海) 初の投げ合いは58年6月28日で、杉浦が8回1/3を投げ12奪三振、2失点で勝利投手。58年は4度対戦した両投手だが、翌年はなし。直接対決は12度と意外に少なく、稲尾6勝、杉浦3勝。
◆堀内(巨人)対江夏(阪神) 初対決の67年9月9日がいきなり投手戦となり、0-0のまま延長戦へ。2人とも延長11回を完投、1-1の引き分けだった。70年7月31日には延長11回で江夏が1-0完封している。堀内の11勝に対し、江夏は7勝。
◆鈴木啓(近鉄)対山田(阪急) 山田が2年目の70年8月13日に初めて対戦し、鈴木啓が2失点で完投勝利。通算勝利は鈴木啓317勝、山田284勝だが、直接対決では山田に軍配。72~77年に山田が6連勝するなど、山田の10勝に対し鈴木啓は4勝どまり。
◆ダルビッシュ(日本ハム)対岩隈(楽天) 07年8月29日に初対戦し、ダルビッシュが完投勝利。ともにWBCを戦った09年には開幕戦で投げ合い、岩隈が3度目にして初勝利。10年5月8日にはともに9回無失点の熱投を展開。日米通算9度の投げ合いで、ダルビッシュ5勝、岩隈3勝。
■若月が唯一の安打
佐々木朗と初対戦だった若月が、唯一の安打を放った。ノーヒットに抑えられて迎えた6回無死一塁。143キロフォークを中前に運び、唯一の好機をつくった。「その前にバントで、全然ストライクだったんですが、バントも簡単にさせてくれない。想像以上にすごかった」。捕手としては「不運な当たりが続きましたし、僕もふがいなさを感じている。あそこでなんとか由伸(山本)の負けを消せれば良かったんですけど」と悔やんだ。
■山崎颯5戦目で初失点
山崎颯が今季5試合目で初めて失点した。2番手で7回に登板。先頭の茶谷に左前打を許すと、2死一、二塁から藤岡に2点目の中前適時打を浴びた。中嶋監督は「ちょっと乗り切れてないというか。そこの方がちょっと心配ですよね」と頭を悩ませている様子。「調子が上がりきってないのか。こちらも見極めないといけない」と話した。
■宮城、盟友に負けん
宮城が好投後の盟友との再会を目指す。15日ロッテ戦で連勝をかけ今季2度目の先発へ。「いい感覚では投げられてるとは思うので頑張りたい」。WBCで共闘した同い年の佐々木朗もこの日の先発だったため「まだ会ってない」という。「日曜日に話せたら話そうみたいなLINEはした。(お互い)いいピッチングができればうれしい」。勝利の報告とともに対面したいところだ。