サイ・ヤング賞右腕、DeNAトレバー・バウアー投手(32)が、来日初登板初先発のマウンドに上がり、4回4安打6奪三振で無失点に抑えた。球数53球で最速は155キロをマーク。

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サイ・ヤング賞の右腕はどれほどの実力で、どんな調整をするのか、じっくり見させてもらった。試合前、およそ70メートルの遠投で捕手を座らせたのは驚いた。3球ほど投げて、左右にずれずある程度制球していた。初めてみる調整法だった。

マウンドまで走り、センターを向いてボールを握ったまま3度腕を振ってから、練習球の最初は捕手を立たせて2歩ほど助走つけて投げた。5球はすべて真っすぐ。1回から4回まで同じ動作を繰り返した。

肝心のピッチングはスライダーに特長があった。WBC決勝で大谷がトラウトから空振りを奪った軌道に近い。日本人のスライダーは斜め下に落ちるが、バウアーのは横へ、30センチほど滑る感じ。これを左打者の内角へ、ストライクゾーン、ストライクからボールへと投げ分けていた。右打者の外角にも効果的に使っていた。

そして、曲がり幅が小さいカット。スライダーが128キロ前後に対し、カットは135キロ前後。変化幅もおよそ10センチ。この2球種を使い分けられると、手ごわい。また、左打者には外に落ちるチェンジアップ、右打者にはツーシームがあるが、この日は確認できなかった。

3回1死一、三塁では明らかに力を込め、最速156キロで左打者2人に、すべて真っすぐを内角に集め、6球すべて空振り。声を出し迫力があったが、この日のピッチングを見る限りは、まだどこまで勝てるか、私には判断がつかない。

なぜなら、右打者のインコースを使っていない。右打者へのスライダーは有効と感じるが、これはすぐにデータとして対策が取られる。もっと、きっちりコーナーをつくピッチングを見ないと、1軍相手にどこまで抑えるかは不透明だ。

クイックは1・38~45(合格基準は1・24)と良くない。足は上げないものの、そこからの動きに時間がかかり、これだと走られる可能性がある。こうしたところも含め、細部までしっかり調整したピッチングをぜひ見たい。(日刊スポーツ評論家)