苦境の長いトンネルを抜けると、恩人たちが笑顔だった。ダイヤモンドを1周したヤクルト村上宗隆内野手(23)の前に、師匠青木が待っていた。77打席もの間、本塁打から遠ざかっていた苦しみをはき出すように、互いの手のひらを強烈に打ち合わせた。ベンチでは拍手をする高津監督が、静かに笑っていた。

7回、塩見の1号2ランで4-6とした直後。3戦連続の猛打賞となった青木を一塁に置き、1死で打席へ。カウント1-1から巨人大江の139キロ直球を捉え、右翼席へ放物線を描いた。「昨日大江さんの打席に立ったので、そのイメージで行った」と狙い通りの同点3号2ランだった。

78打席ぶりの1発。昨シーズン、最終打席で日本選手最多の56本塁打を記録するまでも61打席を要したが、はるかに超えた。「長かったか」と問われ「悪い時もある。昨日から感覚が戻ってきた。続けていきたい」。きっかけはつかんだ。

神宮での前カード。打率1割台と不振を極めた主砲に、青木が歩み寄っていた。「今回はムネが苦しそうだったから俺から行った」。ベンチ裏でスイングを見て悩める愛弟子に「スイングのメカニズムをしっかり見つめ直してやってみたら」と助言していた。

チームは7-8と2日連続の逆転負けで5位に転落したが、高津監督も「打席で割り切りのようなものを感じた」と話したように、4番の復調は大きい。昨季、本塁打を量産した“村神様”の降臨は、時間の問題だ。【三須一紀】

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