若林楽人外野手(25)のひと振りが、西武に流れをもたらした。

3点を追う6回2死からマキノンが四球、山川が安打、栗山が四球で満塁を作った。3人とも2ストライクとなりながら、塁に出た。

松井稼頭央監督(47)が言うに「最高の場面」に、若林が第3打席に立った。前打席ではオリックス山岡にバットを粉砕された。それでも臆さない。

「2打席とも自分の中で感覚は悪くなかったので、打ち取られてても自分の思い通りのスイングができればという2打席だったので。3打席目もあまり考えすぎずに向かって」

高め149キロを球威に負けずに右中間へ。センターの頭を越え、3人全てがホームを踏んだ。「チャンスはそう来ないと思っていたので、集中してやった結果が良かったのかなと思います」。松井監督が言うに「最高の結果」が出た。

この日は7番打者。俊足と思い切りの良さから、キャンプイン時点では1番打者の有力候補に期待されていた。だが、なかなか上がってこない数字。指揮官や打撃コーチ陣にじっと見つめられながらの練習が続いた。

このところの練習で、スイング後のフォロースルーで三塁側の足元を見るシーンが目立った。打球は右へ、視線は逆へ。

「最近、逆方向を意識しすぎて自分のミートポイントがちょっとずれてしまって。自分の打撃を見失いかけていたので。そこの修正の意識付けです」

チームに息を吹き返す同点打を放つと、8回にも貴重な決勝適時打を放った。「負けが続いていたのでどうにしかしよう、という気持ちよりも『チームで勝てる雰囲気を作ろう』と常に言っているので」。

もし敗れていれば、首位オリックスに3連敗。まだ5月上旬ながら、重い流れになりかねなかった。声や姿勢ではなく、自分らしいスイングで勝利への空気を作り出した。【金子真仁】

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