阪神前川右京外野手(20)がプロ初の猛打賞で打線を活気づけた。3回2死二塁、中日先発柳の変化球をとらえて甲子園初打点となる右前適時打。さらに5回は先頭で中越え三塁打と放ち、思う存分「前川コール」を甲子園に響かせた。

「結果が出たのはうれしいです。あとは、どうやって1人1人の投手を打っていくかをもっと考えながらやっていきたい」

最後は左投手に対する初安打で猛打賞を決めた。5点リードの6回無死一塁、フルカウント。中日福のスライダーに泳がされながらも中前に運び、一塁上で筒井外野守備走塁コーチとハイタッチした。「久しぶりの左投手との対戦だったので、ちょっと早めのタイミングで合わせて振る感じで入りました。うまく片手で拾えてよかった」と胸をなで下ろした。

これで3番での打率は5割。当然、岡田監督の評価は高まるばかりだ。「3番に入れて、すごく打点もあげるし、つなぎもできる。本当にいい仕事をしてくれています」。現時点でまだ左腕相手のスタメン出場はないが、指揮官は「これから研究されると思うけど、今日みたいに追い込まれてから右手1本で左投手から打てれば、右左関係なしに使えるようになる」と期待をかける。

この日は前川家にとって特別な日だった。兄夏輝さんの22歳の誕生日。試合前、兄に「お誕生日おめでとう! なにか欲しいもんはある?」とメッセージを送ると、「お前の野球の姿を見てるだけで幸せやからいいで!」と返された。プロ入り直後から「兄がいたから、中学でも智弁学園でも頑張れた」と尊敬してやまない存在。今のところ財布を贈るつもりだというが、「甲子園猛打賞」が何よりのプレゼントだ。

プロ初のお立ち台でも兄に向けてメッセージを響かせた。「いつも支えてもらっているお兄ちゃんに、いい1日になったと思います」。虎の強打者として、日々たくましく進化している。【三宅ひとみ】