ロッテ美馬学投手(36)はマウンドで打者を封じるたびに右手にグッと力を込めた。7回4安打7奪三振無失点の好投で、7月8日の日本ハム戦以来となる2勝目。本拠地ZOZOマリンでは初勝利となり、お立ち台に上がった。

今夏、スマホに「勝ちました。頑張っています」とLINEが届いた。先天性四肢欠損症により生まれつき左手首から先がない、千葉・志学館野球部3年の小川颯介くんからだった。夏の千葉大会4回戦進出時に、日刊スポーツ紙面でチームの「ポジティブな神様」として紹介された記事も読み、うれしさと同時に刺激を受けた。

「本当にすごいんです。自分も負けていられないですよ」。

美馬や家族が「ミニっち」と呼ぶ3歳の長男も右手首欠損症であることが縁で知り合った。ZOZOマリンへの応援にだけでなく、プライベートでも数回会った。力の強さだけでなく、取り組む姿勢や気持ちの前向きさに驚かされた。今夏のベンチ入りはかなわなかったが、春の公式戦では右打席で本塁打も放った。投手から外野手に転向し、グラブを瞬時に着脱しながら、捕球も送球も右手で行う努力も知っている。

「自分も今年は全然勝てなくて、そりゃ悩みましたけれど『やってやるぞ』って気持ちにしてくれる。球場でもテレビでも勝つ姿を見せたいですね」。

「ミニっち」も最近は野球に興味を示し、パパとのキャッチボールやバッティングが最高の遊びだ。昨季から球場にも訪れているが、まだ勝利を直接見せられていない。小川くんのため、ミニっちのため、家族、ファンのため…。今月19日で37歳となる美馬っちは、まだまだ力強く右腕を振り続ける。みんなを喜ばせるために。【鎌田直秀】

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