30年以上野球をやっているから、西武栗山巧外野手(39)にもいろいろな感覚がある。

「ワッショイワッショイの流れで回ってきて、ある程度勢いで行けちゃうこともあるんですよ」

この夜も、そうだった。初回に自身の四球も絡んで3点を先制。2回の第2打席は2走者を置いて三振したものの、4回にはまた2走者を置いての打席が巡ってきた。

相手は前回対戦でチームがノーヒットノーランを喫したソフトバンク石川だ。栗山は出場しなかったが、もちろん「まっすぐ、強いですね。変化球もよく曲がるし」と難敵であることは知っている。

第1打席では3-2から四球を選んだ。第2打席ではカウント2-1から4球連続ファウルにし、パワーカーブを空振り三振。第3打席ではまた4球ファウルにし、カウント1-2からのカットボールを鋭く引っ張り、右翼ポール際へ切れない打球をかっ飛ばした。

この夜は試合を決めた3ランを放つまで、実に9球をファウルにしている。

「結果的にファウルになったというか。ちょっと押され気味だったという感じもあったんで。まっすぐでもカウント取られて、カーブでも。対応を迫られた打席が続いちゃって」

だから、後輩たちが作ってくれたワッショイの空気が頼もしかった。

「今回僕が打ったのは、得点圏を前の打者たちが作ってくれて、ホームランも(得点圏)2回目? あ、3回目? そうや! そうや」

3打席とも得点圏で回ってきたことに、話しながら気付いた。ポイントゲッターの5番打者。チームにとって理想の展開に、栗山も集中力をとぎすませる。

「3回目…そういう巡り合わせもあったと思うんすよ。その中でファウルがあって、僕がタイミング合う球が(本塁打の)あれだったっていう。3打席連続得点圏、そりゃめったにないからめったにないホームランが出るわけですよ」

1秒置いて右腕をバシッ。「笑ってくださいよ!」と、気持ちよく展開していく話を割と真顔で聞いていた私(記者)に今季2度目のツッコミを入れた。

めったに…って、これで146打席で7本も本塁打を打っている。仮に規定打席に達していれば年間25本を超えていきそうな数字。とても「めったに」じゃない-。

ツッコミのお返しにそんなふうに問いかけてみると「いやいや、やめてください」と照れながら下を向いた。3日、40歳になる。【金子真仁】