西武から戦力外通告を受けた張奕投手(29)が21日、母国・台湾で現役を続行することを表明した。昨オフ、西武からオリックスへFA移籍した森友哉捕手(28)の人的補償で西武に移籍。プロ7年目の今季は5月2日の日本ハム戦(ベルーナドーム)を最後に慢性的に悩まされてきた右肩痛で1軍登板5試合で防御率9・00に終わり、10月4日に戦力外通告を受けていた。

カーミニークで自主練習を行ったこの日、「自分の母国に戻って、台湾に戻ってプレーする」と明言した。15日の12球団合同トライアウトに参加し、最速148キロをマークするも、NPB球団からのオファーはなかった。だが表情はどこか晴れやかだった。「年齢もあって、あんまり期待してなかったんです。ただトライアウトに向けて1カ月半くらい準備して、悔いはないですね。今年ずっと肩のけがもあって、半年ぶりの実戦で。投げることは間違いなく復帰できる感じ。それが僕にとっては収穫」と胸の内を明かした。

家族ファーストの決断だった。北海道出身の妻と幼稚園に通う息子を持つ。一家の大黒柱として「自分の年齢も考えて、稼げるときには稼がないと」と妻子を日本に残して海を渡る。来年7月の台湾プロ野球ドラフト会議での指名を目指し、現地の社会人チームでプレーを続行する。

トライアウト終了後もカーミニークで練習を続けてきた。理由は16日から19日まで開催された、アジアプロ野球チャンピオンシップの台湾代表にオーバーエイジ枠で追加招集される可能性があったからだ。結局、招集はされないまま大会は終了。本拠地での練習は「今日、もしかしたら最後かもしれないですね」と話すと、寂しそうな表情を見せた。

そんなこの日の練習は、戦力外通告を受け、来季育成契約見込みの赤上優人投手(24)とキャッチボールとランニング。本来は1人でネットスローをする予定だった。だが赤上を見つけると「あっ、珍しい。どうしたの?って声かけて。そしたら(赤上が)『練習しに来たの!』って。だから、じゃあ、やろうかって流れで」と先輩らしくジョークも交えて汗を流した。

福岡第一入学時に来日し、日本経済大を経てプロで7年。約14年間、人生の半分近くを日本で過ごした。真っ先に浮かぶのは“感謝”だ。プロ入り後は外野手から投手転向も経験。多くのサポートを受けた日々を思い返し「高校、大学の先生たちも含めて、今まで出会った人全員に感謝してますね。」と口にした。4月23日の古巣オリックス戦では1回を無失点。その際にも「感謝の気持ちで、恩返しの気持ちで投げ切って良かった」と話していた。

「また、頑張ります」。笑顔でそう言い残し、お辞儀をして球場を後にした。【黒須亮】