日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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シーズンオフらしい、ほっこりしたニュースに触れた気がした。プロ野球福井県人会が発足。地元では少年少女が集まって野球教室などのイベントが開催された。

冬になると積雪でなかなか野球をする環境が整わずに見下された時代もあった。だが甲子園で上位を狙える高校も登場したし、プロ野球界を代表する選手も育っている。

NPB(日本野球機構)に所属する同県出身の選手、コーチは10人を超えてきた。まだまだささやかだが、“おらが町”から輩出されたプロ野球人が増加してきた証拠でもある。

このような県人会は全国的に広まってきた。これまで各選手が個人的に行ってきた地域貢献活動に、どういった役割で組織としてかかわっていくのかがポイントになる。

初代会長に就任したのは、ヤクルト捕手の中村悠平(福井商出身)だった。WBC決勝でも、先発今永から、最後はダルビッシュ、大谷が締めた継投を支えた日本代表の女房役だ。

野球未経験の少年少女を対象にした野球教室には約100人が参加。オリックス山田、中日橋本、広島玉村らが子供たちとキャッチボール、ティーバッティングで触れ合った。

「野球人口の減少は身をもって感じているので、野球をやろうと思ってもらえるような環境を作りたいです。知恵を出し合いながら野球振興に向けてさまざまなことに取り組んでいきたいです」

故郷に帰っても汗をかく中村には、もう一つ取材したいことがあった。セ・リーグ連覇したヤクルトがV逸どころか、優勝した阪神戦に7勝17敗1分けと大差をつけられたことだ。

「阪神はしぶとかったです。うまく“流れ”を持っていかれたと思ってるんです。例えば、うちの攻撃がゲッツーで終わった後に点をとられると、相手に流れを渡すことになるじゃないですか。競り合いの末に決着がつく試合が多かった。終盤の失点はダメージが大きいですからね」

今シーズンの阪神戦では1点差ゲームが10試合あったが、ヤクルトは3勝7敗だった。岡田阪神の代打糸原の決勝打、佐藤輝のサヨナラ犠飛…。拙者はこの対戦カードは伝統的に接戦が多いと思っている方だ。

捕手のポジションを「グラウンドの監督」といったのは、ヤクルトで優勝監督の名将野村克也だ。中村は「来年は阪神戦の数字を逆にしないといけない」と覚悟を決めている。野球漬けのオフになりそうだ。【寺尾博和】