国内FA権を行使していた西武平井克典投手(31)が13日、いわゆる「宣言残留」を発表した。

11月9日にFA宣言した段階で、他球団への移籍は頭になかった。とはいえ「もやもやをちょっとずつ解消して、本当にすっきり来季の優勝に向かっていけるような時間にしたい」と自身の野球人生に真剣に向き合った。

プロ7年間で337試合に投げた。そのうち309試合がリリーフ。19年にはパ・リーグ記録の81試合に登板した。それでいてここまで大きなケガはない。

「痛くならないです。痛くならないように、その分、体には時間かけてますよね。休みの日とかも。そういうのは、若い子より全然お金も時間もかけてやってるので」

いろいろな局面を任され、タフに投げ抜いてきた。任されるイニングは短い。打たれれば負けに直結しやすい。1失点でも防御率は悪化する。

「一番しんどいのそこっすよ、やっぱり。抑えて当たり前、打たれたら…。すぐ勝ち負けが動くところなので。疲れよりメンタル的なストレスです。打たれたら、次に抑えるまではモヤモヤが続くんです」

立場の苦しさはもちろん、首脳陣も知るところ。今季、平井にはルーティンがあった。試合前の練習後、ロッカールームに引き揚げる前に必ず、松井稼頭央監督(47)のそばに寄る。まずはぺこりと一礼。その後は時には平石洋介ヘッドコーチ(43)も交えながら5分前後、言葉を交わす。

「稼頭央さんがヘッド(コーチ)の時も行ってたんですよ。打たれても抑えても、毎日必ず来なさいと。何も話してないですよ。ほんまに雑談っす。打たれた翌日はだいたい(平石)ヘッドにいじられて。それを見た監督がほほ笑ましく笑ってるだけです」

一方の松井監督は。

「いつもあいさつ来るんですよ、あいつ。俺が来いって? いやいや、違うよ。初めは『あいさつないんか?』と冗談で言ってたのが、習慣になって」

そう笑う。

「今じゃもう、あいつも来ないと気持ち悪いんじゃない? 俺も『あいつ今日なかなか来ないな』って思っちゃうし。でもね、あそこで話せる時間にもなるし、投手のところって(投手コーチに任せているから)なかなかね。そういう意味ではいいのかな」

感情が表に出てしまうマウンドもある。難しい仕事だ。それでも毎日、平井は心を整理し、テンションを上げて試合に臨む。「僕を必要としてくれているところでやりたい」が信条。来季も、大事な5分間でぐっと高める。【金子真仁】

◆平井克典(ひらい・かつのり)1991年(平3)12月20日生まれ、愛知県一宮市出身。飛龍-愛知産大-ホンダ鈴鹿を経て16年ドラフト5位で西武入団。17年5月27日楽天戦で初登板。18年からセットアッパーを任され、19年にシーズン81試合登板のパ・リーグ新記録を樹立し、チームの連覇に貢献。今季推定年俸8000万円。180センチ、86キロ。右投げ右打ち。